精神分裂病に対するリスペリドンと通常のメジャートランキライザーの比較

Risperidone versus 'conventional' antipsychotic medication for schizophrenia

Kennedy E, Song F, Hunter R, Gilbody S

最終更新日:28/11/1997


目的:精神分裂病に対するリスペリドンの有効性を通常のメジャートランキライザーと比較して評価する.

検索方法:Biological Abstracts,コクラン精神分裂病グループの臨床試験データベース,コクランライブラリ,EMBASE,MEDLINE,PsycLIT及びSCISEARCHの電子検索.すべての同定された臨床試験の引用文献を他の臨床試験の引用を求めて検索した.製薬会社および臨床試験の著者に連絡をとった.

選択基準:精神分裂病あるいは他の重症精神障害を持つ者に対してリスペリドンと通常のメジャートランキライザーを比較しているランダム化比較試験すべて.

データ収集と解析:レビュアーは引用部分と,可能なものは抄録を互いに独立に査読し,文献を取り寄せ,再度査読し,質を評価した.データ抽出も独立に行われた.臨床改善度,副作用(運動障害),治療の受忍度を一次的帰結変数とし,リスペリドンとハロペリドールの用量および罹病期間について感度分析を行った.

均質な二値データについて,オッズ比(OR),95%信頼区間(CI),および可能な場合は治療効果発現必要症例数(NNT)を,intention-to-treatに基づいて算出した.

主な結果:短期的な臨床試験12件と長期的な臨床試験2件から3401症例のデータが集積された.今回のレビューでは,認知機能,社会機能,生活の質(QOL),就労状況,退院,および再燃率に関してのエビデンスは提供されない.

リスペリドンは,中等度の臨床改善のオッズを増加させた(OR 0.65, CI 0.55-0.77, NNT=10, CI: 7-16).精神分裂病の陽性・陰性症状については通常のメジャートランキライザー以上の影響をほとんどもしくはまったく与えないようであるが,主にハロペリドールと比較した場合,運動障害を起こす傾向が少なかった(抗パーキンソン薬の使用についてOR 0.43, CI 0.34-0.55, NNT=7, CI: 5-10).

リスペリドンは,精神分裂病患者にとってより受け入れやすいようである(対照群での脱落率を30%としてOR 0.69, CI 0.57-0.83, NNT=15, CI: 10-30).リスペリドン服用者はわずかながら傾眠になりにくい(OR 0.78, CI 0.61-0.99, NNT=22).しかし,体重増加はリスペリドンの方に多い(OR 1.51,CI 1.14-2.00, NNT=13).

Funnel plot(漏斗図)を見ると,一般的に規模の小さい臨床試験の方が規模の大きな臨床試験よりもリスペリドンに有利な結果を出している.今回包含された臨床試験ではリスペリドンに有利な出版バイアスがあったためかもしれない.

リスペリドンの用量についての感度分析(1mg 及び2mgを投与された者を除く)では,主たる帰結変数について結果は本質的に変わらなかった.ハロペリドールの高用量(10mg以上/day)を除外したデータではわずかに結果が変わった.リスペリドンは,臨床的改善をもたらし脱落を予防する点ではハロペリドールに比して有意に有効ではなくなったが,運動障害に関しては依然優れていた.

結論:リスペリドンの長期的効果について結論は出せないし,ハロペリドールとの比較を越えて一般化することは不適切であろう.

リスペリドンは精神分裂病を持った者にとってより受け入れやすいかもしれない.また,ハロペリドールと比較すると限定的な臨床改善および副作用プロフィールにおいては若干利点があるかもしれない.この点についてのリスペリドンの優越性は,出版バイアスが存在したかもしれないので過大評価されているかもしれない.若干の利点があったとしても,その利点は高価な薬剤費および体重増加などの他の副作用と比較勘案しなくてはならない.

長期にわたる,よく施行され公表された臨床試験が必須である.funnel plot(漏斗図)上の非対称性の原因,とりわけ出版バイアスの存在を確認するには,さらに研究が必要である.

(訳注:出版バイアスとは,実施されても公表されない臨床試験があるために,実施された試験すべてを検討の対象とできないことを指す.公表されない理由は実施者に望ましくない結果が得られた場合などがあると考えられ,公表される臨床試験は特定の薬剤あるいは治療法に有利な結果を示している試験ばかりになることがある.)


Citation: Kennedy E, Song F, Hunter R, Gilbody S. Risperidone versus 'conventional' antipsychotic medication for schizophrenia. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:廣瀬美智代/古川壽亮)