嚢胞性線維症における経口ステロイド剤

Oral steroids in cystic fibrosis

Cheng K, Ashby D, Smyth R

最終更新日:17/07/1998


目的:呼吸器の合併症である嚢胞性線維症のマネージメントにおける経口ステロイド剤の有効性を特に肺機能と副作用の発現に関連して評価する.長期間の抗炎症剤の使用(30日以上)と,呼吸機能悪化時の短期間の使用(30日以内)とを分けて試験することを目標とした.

検索方法:広範囲の電子データベースの検索から確認された文献,関連のある雑誌のハンドサーチ,学会抄録のハンドサーチからなるコクラン嚢胞性線維症グループの比較臨床試験特別レジスターによる.このレビューのために1948年-1996年のJournal of Pediatricsをハンドサーチした.

選択基準:嚢胞性線維症患者において,病状悪化の治療のために5〜30日の期間,あるいは30日以上の長期間経口糖質副腎皮質ステロイドを投与された場合と,プラセボもしくは何も付加的治療をしない場合とを比較した,全てのランダム化比較試験あるいは偽ランダム化比較試験.

データ収集と解析:以下のアウトカムが評価された.すなわち,呼吸状態の悪化に対し使用された抗生物質の静脈注射の日数,客観的な肺機能検査(FEV1,FVC),運動耐性能,成長と栄養指数,クッシング様風貌,白内障,日和見感染のような副作用.

主な結果:合計で354人の患者について調査された3つの試験が同定された.それらのうち2つは4年間追跡の長期試験であり,もう1つは12週間だけ追跡したものであった.共通のアウトカムでも,異なる時点で調査されたものや表現の多様性を伴ったものについては,前もって決めておいたアウトカムとしてはデータの欠損とした.メタ・アナリシスは不可能であった.プレドニゾロン換算で1mg/kgの隔日投与での経口ステロイドは,嚢胞性線維症患者の肺疾患の進行を遅らせることが明らかである.治療開始後24ヶ月で,1mg/kgのプレドニゾロン隔日投与により治療された患者では70.4%と,プラセボで治療された患者の41.6%と比較して%FVCが増加していた.開始から48ヶ月の%FEV1における平均の明らかな変化は,1mg/kgのプレドニゾロンの隔日投与群では-2%であるが,プラセボ群では-6%だった.しかし,長期間におけるこの利益は,副作用の発生についても考慮に入れる必要がある.直線的な成長の遅延は,2mg/kgのプレドニゾロン隔日投与群では投与開始から6ヶ月で,1mg/kgのプレドニゾロン隔日投与群では24ヶ月から観察された.有害事象の発生,特に血糖異常,白内障,成長遅延のなどについては,4年間の研究のうちの1つ研究(Eigen 1995)で,2mg/kgのプレドニゾロン隔日投与群を中止させる早い結末になったが,1mg/kgの隔日投与に継続された.これらの副作用の発現率や信頼区間はどちらも報告されなかった.そのかわり副作用の数は報告された.

結論:プレドニゾロン換算で1-2mg/kgの経口ステロイド剤の隔日投与は嚢胞性線維症における肺疾患の進行を遅らせることが明らかであるが,この利益は副作用の発生,特に白内障の進展と直線的な成長における影響を考慮する必要がある.低用量の糖質副腎皮質ステロイドの隔日投与に関する危険/利益の分析は非常に重要であろう.経口ステロイドの短期間使用の役割はもっと十分に評価されるべきである.今後の研究はまた,代替の抗炎症剤の有効性を評価すべきであり,現在のエビデンスとしては経口ステロイド剤の長期使用は有害であるということを示唆している.


Citation: Cheng K, Ashby D, Smyth R. Oral steroids in cystic fibrosis. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:白石由里/濱崎圭三)