低出生体重や早期産の新生児における経腸的抗生物質投与による壊死性腸炎の予防

Prophylaxis of necrotising enterocolitis with enteral antibiotics in low birthweight or preterm infants

Bury RG, Tudehope D

最終更新日:07/01/1998


目的:低出生体重で早期産の新生児における壊死性腸炎に対する経腸的抗生物質投与による予防の利害を評価すること.

検索方法:周産期試験のOxfordデータベース,MEDLINE(検索語: necrotizing enterocolitis, antibiotics; 制限: newborn infant),参考文献を含んだ以前のレビュー,要約,学会の抄録,専門家の情報,手作業で検索した新生児小児科と細菌学の分野の雑誌を調査した.

選択基準:低出生体重(2,500g未満)かつ/または早期産(在胎37週未満)の新生児において壊死性腸炎に対する予防として使われた経腸的抗生物質のすべてのランダム化または準ランダム化比較試験.

データ収集と解析:コクラン共同研究とその新生児レビューグループの標準的方法が使われた.試験の著者や研究機関を隠した状態で第二著者が各試験の方法論的質を検討した.著者は別々にデータを抽出し,その後それを比較し,相違点を解決した.相対危険度,危険度差とnumber needed to treatが解析に用いられた.

主な結果:予防的な経腸的抗生物質投与は,統計学的に有意に壊死性腸炎を減少させた[RR 0.47(0.23, 0.98); RD -0.072(-0.136, -0.008); NNT 13.9(7.4, 125)].壊死性腸炎に関係する死亡については統計学的に有意との境界で減少した[RR 0.16(0.02, 1.26); RD -0.097(-0.183, -0.010); NNT 10.3(5.46, 100)].

すべての死亡(1試験のみ)や壊死性腸炎様の腸症(1試験のみ)については有意差はなかった.耐性菌の定着の発生率は統計学的に有意に増加した[RR 0.16(0.02, 1.26); RD 0.123(0.008, 0.238); NNT 8.1(4.2, 125)].

結論:臨床実地で壊死性腸炎の予防に経腸的抗生物質を使用することを支持する充分なエビデンスはない.さらにこの問に答えるには,すべての重要な有用性や副作用を調べるに足るサンプルサイズの大規模な試験が必要であろう.感染,特に耐性菌による感染,に関する副作用について評価されなければならない.


Citation: Bury RG, Tudehope D. Prophylaxis of necrotising enterocolitis with enteral antibiotics in low birthweight or preterm infants. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:矢野 礼/佐藤孝道)