満期産およびほとんど満期産に近い新生児の呼吸障害に対する一酸化窒素(NO)投与

満期産およびほとんど満期産に近い新生児の呼吸障害に対する一酸化窒素(NO)投与

Nitric oxide in respiratory failure in full-term and nearly full-term newborn infants

Finer NN, Barrington KJ

最終更新日:25/11/1997


目的:低酸素血症の新生児に対する一酸化窒素吸入(INO)治療が,酸素化を改善し死亡率やECMOの必要性を減少させられるかどうかを評価する.

検索方法:小児科/新生児の文献と個人的なデータファイルを電子検索とハンドサーチ.さらに加えて,必要な情報を確認するために,抄録として発表された論文の主だった研究者に連絡をとった.

選択基準:満期産およびほとんど満期産に近い乳児に対するランダム化および準ランダム化試験.一酸化窒素吸入投与.臨床的に関連する結果:死亡例を含む,ECMOの必要性,酸素化.

データ収集と解析:低酸素血症の満期産およびほとんど満期産に近い児における,8つのランダム化比較試験が見出された.8つの研究が満期産の新生児という条件に合致.8つのうち1つは先天性横隔膜ヘルニアの乳児を対照としたものであったが,それ以外は選択基準に合致した.(Ninos 1997).

主な結果:満期産およびほとんど満期産に近い低酸素症の児への一酸化窒素の吸入は,エンドポイントとしての死亡発生率やECMOの必要性を減少させることによって,結果を改善するように思われた.この減少は,ほとんどがECMOの必要性の減少によるもので,死亡率は減少していなかった.一酸化窒素を受けた児の約50%において,酸素化は改善した.酸素化インデックスは,治療開始後30から60分以内に(重み付け平均として)15.1近く減少し,PaO2は平均53mmHg増加した.乳児が明らかな心エコーでのPPHNの証拠を持つか持たないかは,結果に影響を与えるようには思えなかった.横隔膜ヘルニアの乳児の結果は改善されず,実際には結果はわずかに悪くなった.

結論:現在,入手可能な証拠では,横隔膜ヘルニアでない,低酸素血症の満期あるいはほぼ満期に近い児に,濃度20ppmで一酸化窒素吸入を行うことは,合理的にみえる.ランダム化比較試験に登録された,一酸化窒素吸入後の生存児への神経発達機能と呼吸機能の長期的な追跡調査は,この(新生児の呼吸不全に対する一酸化窒素吸入)療法をより確実なものとする上で必要である.


Citation: Finer NN, Barrington KJ. Nitric oxide in respiratory failure in full-term and nearly full-term newborn infants. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:安西邦男/佐藤孝道)