成人喘息におけるステロイド減量剤としてのメトトレキセート

Methotrexate as a steroid sparing agent in adult asthma

Davies H, Olson L, Gibson P

最終更新日:04/03/1998


目的:安定期のステロイド依存性喘息をもった成人に対して,経口副腎皮質ステロイドに,メトトレキセートを加えることの利点に関しての文献のシステマティック・レビューを行う.

検索方法:初期の調査はコクラン気道グループ(喘息) のランダム化比較試験の登録による.このレビューの調査条件は,"steroid dependent OR methotraxate"である.この過程から確認されたレビュー論文と文献は,さらなる引用とランダム化比較試験のために調査されていた.研究の著者は,さらに多くの情報に接触している.

選択基準:研究の種類.すべての研究は,安定したステロイド依存の成人喘息患者における双盲のランダム化比較試験である.すべての関連する研究が含まれている.英語以外の言語による研究も含まれていた.

参加者の種類.喘息のコントロールのために長期の経口副腎皮質ステロイド(OCS) を必要とする成人喘息患者.経口副腎皮質ステロイド非依存の患者,もしくは16歳以下の子供の試験は除外された.

介入の種類.メトトレキセートのなんらかの利益が出現するのを考慮にいれた十分な治療期間(少なくとも12週間)でステロイド依存の成人喘息患者の治療になんらかの経路で,メトトレキセートもしくはプラセボを盲験でランダム化の方法で加える.不十分な期間(12週間未満)の試験は除外された.

アウトカム測定の種類.研究のアウトカムはステロイドの投薬量の変更も含んだ広範囲な測定でなければならなかった.

データ収集と解析:すべての確認されたRCTは独立的に,二人の批評家とすべての集められたデータによって論評された.論評は,コクランの割付け隠蔽の評価と方法論的質のためのJadadスケールによりスコア化されていた.批評家の意見の相違は第3の批評家の意見を参照した.それ以上の情報が必要とされる所は,さらなる詳細とデータのために試験論文の本人に接触する試みがなされた.

主な結果:合計13のRCTが確認された.11つは出版された研究で,2つは抄録のみであった.10つの出版された研究は,分析のための十分なデータが入手可能であった.そのうちの7つはクロスオーバー研究で、3つはパラレル研究であった.研究を完了するのに合計185人の患者のデータがあった.一つの大規模な試験の患者は全体の三分の一を構成する.研究の計画,初期の経口副腎皮質ステロイド投与量,吸入副腎皮質ステロイドと既報告の結果は,多岐にわたっている.

5つの研究は,慢性のステロイド依存喘息患者へのメトトレキセートの導入が有意な経口副腎皮質ステロイド投与量の減少を生じるのを見つけた.一方の5つはそのような変化は見つけられていない.メトトレキセート治療患者には重大な副作用がある.

メタ・アナリシスはパラレル研究とクロスオーバー研究で別々に遂行された.経口副腎皮質ステロイド投与量の減少を示した.パラレル研究ではメトトレキセート (WMD -4.1mg/day 95%CI -6.8, -1.3).クロスオーバー研究では(WMD -2.9mg/day 95%CI -5.5, -0.2).FEV1においては違いはなかった(WMD 0.12L 95%CI 0.21, 0.45).

副作用はよく起こった.肝毒性はメトトレキセートにおいて特に問題で(ピートのオッズ比 6.9; 95%CI 3.1,15.5) ,32の離脱のうち5つにその原因があった.

結論:長期にわたるステロイド治療に依存する成人喘息患者においてメトトレキセートは,ステロイド減量効果を少し示す.その効果は殆どの患者において相対的に並で,重大な数の副作用を伴う.肝毒性が特に際立って多い.ここで論評された10の研究の結果はさまざまである.たいてい少数であることや,ランダム化の方法の不適切な記述など、方法論的な欠点がある.その中の多くの研究の期間は、メトトレキセートの最大限の利点が明らかに認められるには不十分である.さらに不適当な証拠,もしくは述べられていない吸入副腎皮質ステロイド用法,run-in期間の間の経口副腎皮質ステロイド投与量安定なベースラインの欠如,研究の前に投与量を減らす公式な試みを欠いていることは、メトトレキセート導入する前に他のステロイド節約ストラテジーが最適に使われていなかったのではないかということを示唆する.また試験ではない状況で予想されるより患者の管理が密であるという証拠がある.プラセボとメトトレキセート治療患者両者の,経口副腎皮質ステロイド有意な減量が見られる試験は,改善された管理と全体的な喘息の管理が原因であると言える.これらの要素の効果がメトトレキセートによる効果の大きさによるものであると結論することはできない.ステロイドが引き起こす副作用を十分減少させ,メトトレキセートによる副作用の増加を相殺するには,日々のステロイド服用量の全体的な減量はおそらく少量すぎる.気道機能の改善はない.メトトレキセート使用に関連しておこったであろう1死亡例がある.長期にわたる経口ステロイド服用患者におけるメトトレキセートの日常的な服用はみられない.これらの患者は個々の危険性や利点を非常に慎重に分析することが必要とされる.慢性のステロイド依存喘息患者におけるメトトレキセートの効果はさらなる研究が必要である.


Citation: Davies H, Olson L, Gibson P. Methotrexate as a steroid sparing agent in adult asthma. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:岡野愛子/鶴岡優子)