乳児期における長鎖多価不飽和脂肪酸の補給

Longchain polyunsaturated fatty acid supplementation of term infants

Karen Simmer

最終更新日:24/07/1998


目的:n-3,n-6の必須脂肪酸であるα-リノール酸,リノレイン酸は,n-3,n-6の長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)の前駆物質である.LCPUFA が乳児期における必須栄養素であるかどうかについては意見が分かれている.このレビューの目的は,乳児期に対してLCPUFAを含む製剤の補充が安全で,有益かどうかを評価することである.主な興味ある領域は,乳児期の視力,発達,成長に対するLCPUFA 補充の効果である.

検索方法:研究は,MEDLINE,関連論文や会議録の参考文献リストのチェック,および個人的接触により確認した.

選択基準:乳児期(妊娠37週以上で生まれた)において,LCPUFAを補充した製剤,臨床的エンドポイントのある全てのランダム化試験をレビューした.

データ収集と解析:8つのランダム化試験が確認された.それらのうちの1つは,生後3週間経ってから補充を開始したために除外され,もう1つは,評価を待っている(今の時点で間に合って算入するには不十分なデータが発表された).残りの6つの試験は,適度に質が高いと評価された.LCPUFA補充の方法と,これらの試験において調べたアウトカムは様々なために,試験の組み合わせには制限があった.

主な結果:Makridesら研究(1995&1996)において,視力は4ヶ月および7〜8ヶ月における視覚誘発電位で評価された.最初の試験では,LCPUFAを補充された乳児は,両時点で視力の成熟率がより改善していたが,2つめの試験では,4ヶ月の時点でグループ間に差は認められなかった.

Carlsonら(1996),Clausenら(1996),そしてAustedら(1997)の試験において,視力はTellerの視力カードにより評価された.補充は,生後1年を通じて視力対して一定した効果を示さなかった.

全身の発達は,全て少人数ではあるが,5つの試験で調査された.2つの試験が補充の有益性を示唆していた.1つの試験が4ヶ月の補充による有益性を報告した(発達度はBrunet Lezine testにより測定されたDQ,Agostiniら1995).しかし,それらのグループを1年と2年で同じテストにより再評価し,DQでは差が見出されなかった(Agostiniら1997).もう一方の試験は,9ヶ月の補充での有益性を報告した(Fagan Infantestにより測定されたオモチャの好み novelty preference,Clausenら1996). The Adelaide studiesは1年のDQにおける補充効果はないと報告した(Bayley Scales of Infant Development(BSID),Makridesら1995&1996).The Portland studyは1年(BSID)あるいは3年(Stanford Binet IQ test)での発達における補充の効果はないと報告した. The Portoland studyはまた,1年(McArther Communicative Development Inventory,Janowskyら1995)あるいは3年(Peabody Picture Vocabulary Test,Scottら1997)での言葉の発達における補充の効果はないと報告した.

成長は,Makridesら(1995&1996)とAustedら(1997)の研究において,少数の乳児で測定された.LCPUFA補充が乳児期の成長を抑えるということは示されなかった.

結論:現時点では,LCPUFAの補充のランダム化比較試験から,CLPUFAの補充が視力と認知の発達に対して何かしらの有益であるという仮説を支持するエビデンスはほとんどない.LCPUFAの補充が乳児期の成長に影響を及ぼすということを現在示すことのできるランダム化試験のデータはない.


Citation: Karen Simmer. Longchain polyunsaturated fatty acid supplementation of term infants. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:高口恵子/浅井泰博)