早期産かつ,または低出生体重新生児における予防的静脈内免疫グロブリン投与

Prophylactic intravenous immunoglobulin(IVIG) in preterm and/or low-birth-weight neonates

Ohlsson A, Lacy JB

最終更新日:05/12/1997


目的:院内感染を防ぐために,早産(出生時妊娠37週未満)かつ/または低出生体重(2500g未満)の新生児に,免疫グロブリンを静脈内投与することの有用性/安全性を(プラセボや治療なしと比較して)評価すること.

検索方法:MEDLINE,EMBASE,コクラン・ライブラリー,Reference Update Databasesから,1997年11月に以下のキーワードで検索した: immunoglobulin and infant-newborn and (random allocation or controlled trial ro randomized controlled trial(RCT)).

選択基準:以下の基準が,研究をこのオーバービューに組み込むかを選択するのに使われた:

1)計画: IVIGの投与が,プラセボの投与や治療なしのコントロール群と比べられたランダム化比較試験

2)対象: 早期産(妊娠37週未満)かつ/または低出生体重(2500g未満)の新生児

3)方法: 最初の入院中に細菌/真菌感染を予防するためのIVIG投与(8日間か,それ以上).(最初に体液性免疫マーカー上のIVIGの効果を評価するように計画された研究は,経過観察期間が1週間かそれ以下のため,除外した.)

4)次の結果の少なくとも1項目が報告されている: 敗血症,重大な感染症,全ての原因による死亡,感染症による死亡,入院期間の長さ,脳室内出血(IVH),壊死性腸炎(NEC),気管支肺異形性(BPD).

データ収集と解析:2人のレビュアーが別々に,各々の研究で報告された結果の情報を抽出し,1人(AO)が違いをチェックし,結果をプールした.

確定した効果モデルを使い,相対危険度(RR)と危険度差(RD)とその95%信頼区間(CI)を報告する.RDが統計的に有意な時には,治療に必要な人数(NNT)もまた95%CIとともに計算した.結果は,関連した結果が報告されているすべての容認された研究が含まれた.結果に対して統計学的に有意な差が見られた時には,最も質の高い研究のみを含んだ,次の(高感度)分析が行われた.

主な結果:15研究がレビューの組み込み基準に適合した.これらの研究は5054例の早期産かつ/または低出生体重の新生児が含まれ,この系統的レビューに関連する結果を少なくとも1項目報告していた.すべての研究を総括すると,敗血症の1回または何回かのエピソードの統計学的に有意な減少を認めた[RR0.83(95%CI 0.72, 0.97); RD-0.028(95%CI -0.006, -0.051); NNT36(95%CI 20,167)].研究間に有意な差がみられた.高感度分析では,質の高い研究が組み合わされたが,結果は有意のままであった[RR0.78(95%CI 0.62, 0.98); RD-0.031(95%CI -0.006, -0.059); NNT32(95%CI17, 333)].この分析では統計学的に有意な研究間の差はなかった.

すべての研究を合わせると,重大な感染症の1回または何回かのエピソードについても統計学的に有意な減少がみられた[RR0.85(95%CI 0.75, 0.95); RD-0.032(95%CI-0.010, -0.054); NNT31(95%CI 19,100)].研究間に有意な差がみられた.高感度分析では,質の高い研究が組み合わされたが,結果は有意のままであった[RR0.80(95%CI 0.68, 0.94); RD-0.041(95%CI -0.012, -0.069); NNT24(95%CI15,83)].研究間に統計学的に有意かどうかボーダーラインの差が見られた.すべての原因による死亡,感染による死亡,NEC,BPD,IVH,入院期間に統計学的に有意差は見られなかった.IVIGの重要な副作用についての報告はどの研究にもなかった.

結論:IVIGの投与は敗血症かつ/または重大な感染症を3-4%減少させるが,他の罹患率:NEC,IVH,入院期間,死亡率の減少には関与しない.IVIGの予防的投与は短期の重大な副作用と関係しない.IVIGの予防的使用をするかどうかは,費用や臨床的な結果に対する価値によって決まる.早期産かつ/または低出生体重児の院内感染を減少させるために,以前に研究されたIVIGの投与効果を試験するさらなるランダム化比較試験をおこなうことを正当化する理由はないように思える.これらのメタ・アナリシスの結果から,基礎科学者や臨床家は院内感染を防止する他の道を追求することを考えるべきである.


Citation: Ohlsson A, Lacy JB. Prophylactic intravenous immunoglobulin(IVIG) in preterm and/or low-birth-weight neonates. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:野崎香織/佐藤孝道)