早産児のための母乳への多種成分強化剤

Multicomponent fortification of human milk for premature infants

Kuschel CA, Harding JE

最終更新日:11/08/1998


目的:この研究の目的は早産児において母乳に複合栄養補助剤を添加することのよって生じる,副作用のない成長の促進,骨代謝,神経系発達のアウトカムについて明らかにすることである.

検索方法:コクラン新生児レビューグループの標準的検索法が使用された.これには周産期試験のオックスフォードデータベース,MEDLINE,断面的な引用文,要約,会議やシンポジウムの記録,専門家の意見,雑誌のハンドサーチなど英語を中心とした検索が含まれる.

選択基準:託児所にいる早産児に対して複合栄養素の含む,あるいは補助剤を含まない母乳の補充についてのランダム化,あるいは準ランダム化試験が選ばれた.

データ収集と解析:データは各々の著者が試験の質とデータ抽出の評価を別に行い,相対リスクと加重平均差を総合して,コクラン共同計画とコクラン新生児グループの標準手法で抽出された.

主な結果:多種成分強化剤を加えた母乳の供給は短期間の体重増加,身長,頭の成長を増加させた.血清アルカリフォスファターゼ値に影響はなかった.骨のミネラル含有量,窒素保有量は増加したようだった.長期間の神経系発達や成長のアウトカムを評価する十分なデータはなかった.調査された子供の全数とランダム化され,この結論の信頼性を減少すると思われた何人かの子供の結果にもかかわらず,成分強化剤の不利な影響が有意に増加することはなさそうであった.血中の尿素値は増加し,血液PHレベルは微量に減少していたが,有意差は明らかではない.

結論:多種成分強化剤を加えた母乳の供給は短期間の体重増加,身長,頭の成長の増進に関与していた.長期の利益や,有害な影響がないということを保証するためには不十分なエビデンスにも関わらず,母乳への成分強化剤の補足と,何も補足しなかった場合の評価をするそれ以上の研究は実施されそうにない.今後は異なった商標を持った補助剤間の比較と,最善の強化剤の合成について調査する短期,長期共のアウトカムを評価するための調査が行われるべきである.


Citation: Kuschel CA, Harding JE. Multicomponent fortification of human milk for premature infants. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:白石由里/濱崎圭三)