高齢者の転倒発生率の減少に対する介入

Interventions to reduce the incidence of falling in the elderly

Gillespie LD, Gillespie WJ, Cumming R, Lamb SE, Rowe BH.

最終更新日:26/08/1997


目的:ランダム化比較試験から,自宅や施設や病院に暮らす高齢者の転倒の発生を減少させるプログラムの有効性に関する,もっとも良好なエビデンスを確認すること.

検索方法:1997年の5月までに登録された,関連のあるランダム化比較試験を,コンピュータを用いて,MEDLINE, EMBASE, CINANHL, PsyLIT, Social Sciense Citration index,Dissertation Abstracts,Index to UK Theses,コクラン比較臨床試験レジスターなどで検索し,検索した研究論文の参考文献のリストからも関連のあるランダム化比較試験を孫引きし,この分野の研究者と接触をもった.またランダム化比較試験はコクラン筋骨格−外傷グループの比較臨床試験特別レジスターからも得た.

選択基準:ランダム化比較試験には,病院や施設で,おそらく転倒の原因になると思われる事柄について,それを取り除いたり,そういう状況にならないように行った,さまざまな試験を含んでいる.調査したメインアウトカムは,転倒の回数,転倒者の数,怪我や骨折,医療機関を受診することに到った転倒の数,2回以上の転倒の数とした.バランスの改善などの中途半端なアウトカムが中心の研究であったり,転倒の結果について報告のない研究は対象から除いた.

データ収集と解析:検索方法によって確認された試験は,二人のレビュアーによって選択基準にもとづいて評価された.それぞれの対象とした研究に対する質の評価とデータ抽出は,二人のレビュアーによってそれぞれ独立的に予備的ツールを用いて行われた.レビュアーは原著者と情報源の施設名について,ブラインドにされていなかった.個々の試験のアウトカムが解析された.同様なデザインによる研究の中から結果の蓄積が行われた.

主な結果:18の研究と1つの前もって計画されたメタ・アナリシスが含まれた.運動の効果のみの結果をみた4つの研究の分析は,転倒からの保護を証明しなかった(オッズ比 1.05;95%信頼区間 0.74-1.48).1つの試験に基づけば,健康教室とそこで行われる体操は(転倒予防になるという)エビデンスはなく(オッズ比 1.72;95%信頼区間 0.78-3.75),または健康教室単独(オッズ比 1.25;95%信頼区間 0.51-3.03)でも,転倒予防になるというエビデンスはなかった.しかしながら,個々の患者における複数のリスクファクターを対象とした介入(オッズ比 0.77;95%信頼区間 0.64-0.91)と,環境の危険と他のリスクファクターをターゲットとした行動介入に焦点を当てた介入(オッズ比 0.81;95%信頼区間 0.71-0.93)から転倒に対する有意な保護の有効性が明らかになった.

結論:転倒予防のプログラムを企画している公衆衛生関係者たちは,個々の患者の内因性,外因性,両方のリスクファクターを対象とした介入とともに,リスクファクターをもった高齢者の健康スクリーニングを考えなくてはならない.体操のみであるとか,転倒防止のための健康教室のような単独の介入の効果に関しては不十分なエビデンスしかない.


Citation: Gillespie LD, Gillespie WJ, Cumming R, Lamb SE, Rowe BH.. Interventions to reduce the incidence of falling in the elderly. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:横田恭子/内堀充敏,白石由里)