関節包外大腿骨頚部骨折の固定:各種骨外固定用インプラントの比較(fixed nail plates,RAB-plate,Pugh nail,Medoff plate,sliding hip screw)

Extracapsular hip fracture fixation: comparison of different extramedullary fixation implants (fixed nail plates, RAB-plate, Pugh nail, Medoff plate, sliding hip screw)

Parker MJ, Handoll HHG, Chinoy MA

最終更新日:11/07/1998


目的:骨格的成人の近位大腿骨の関節外骨折の外科的治療のための髄外固定用インプラント各種を比較すること.調べるアウトカムは次の5つのカテゴリーに分類した.a)手術の詳細,b)骨折固定時の合併症,c)術後合併症,d)解剖学的回復状況,e)最終アウトカム評価.

検索方法:1998年3月までに,コクラン筋骨格−外傷グループの一般的検索方法を用いて,語句に特異的なハンドサーチを整形外科雑誌数誌,学会予稿集について行い,関連記事の文献リストを調べて,試験を同定した.言語による制限は適用しなかった.

選択基準:成人の関節包外大腿骨頚部骨折時の固定に用いられる髄外インプラントを比較したランダム化試験及び準ランダム化試験.

データ収集と解析:データは発表文献から抽出し,臨床実施者から追加情報を得た.適切かつ可能な限り,アウトカム評価の結果はプールした.試験の方法論的質は10段階評価スケールを用いて評価した.

主な結果:採用された試験の方法論的質はいずれも不良で,割付けの隠蔽が明確に行われていたものは無かった.

3試験,被験者数355名(Jewett 及びMcLaugghlin)ではfixed nail platesとsliding hip screw(SHS)を比較した.限られたデータでは,SHSに比し,fixed nail platesでは固定無効のアウトカムのリスクの増加が見られた.

1試験,被験者数233名ではRAB plate(支柱に斜位の固定角扁平板)をSHSと比較した.この研究ではどちらのインプラントも高頻度で固定無効であった.カットアウト,再手術,固定無効,下肢短縮,内反変形,及び死亡率において,SHSよりもRAB plateの方が発生率が低い傾向にあった.これらのアウトカムは統計的有意ではなかった.

1試験,被験者100名ではPugh nailをSHSと比較した.報告されたアウトカム評価にインプラント間で有意差はなかった.(手術時間,固定無効率,深部感染症,深部静脈血栓症,在院期間,死亡率,追跡期間中の疼痛及び可動性)

2試験,うち1試験は被験者600名以上,がMedoff plateを他の髄外インプラントと比較しているものとして同定されたが,1試験のみ採用した.採用した研究は,被験者176名182骨折であり,Medoff plateをSHSと比較した.Medoff plateでは,有意に高い平均手術失血量及び長い平均手術時間が報告された.しかし,Medoff plateで固定した不安定転子部骨折において固定無効のリスクは低い傾向であった.

結論:fixed nail platesはSHSに比較して,インプラントの破損,固定無効のリスクの増加が見られた.その他のアウトカムについてランダム化試験からのエビデンスが無いということはSHSが全般的に優れているという結論は出せないということであるが,固定無効率の増加が重大な要件であり,この点においてSHSの方が望ましいことが示された.

RAB plate,Pugh nail,Medoff plateのいずれかとSHSとの臨床的有意差をもって確定的な結論を引きだすためには,情報が不十分である.


Citation: Parker MJ, Handoll HHG, Chinoy MA. Extracapsular hip fracture fixation: comparison of different extramedullary fixation implants (fixed nail plates, RAB-plate, Pugh nail, Medoff plate, sliding hip screw). In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:廣瀬美智代/石川鎮清)