大腿骨近位の関節包外骨折について;顆状突起頭部の釘(エンダー釘やハリス釘)対髄外インプラント法(固定釘プレート法やスライデイングヒップスクリュー法)

Extracapsular proximal femoral fractures: condylocephalic nails (Ender or Harris nails) versus extramedullary implants (fixed nail plates or sliding hip screws)

Parker MJ, Handoll HHG, Bhonsle S, Gillespie WJ

最終更新日:01/07/1998


目的:顆状突起頭部の釘(髄内釘は膝の上部から大腿骨髄まで挿入するが,例えばエンダー釘とハリス釘がある.)に対して,インプラント法(髄外インプラント例えば固定釘プレート法やスライディングヒップスクリュー法,もしくは他の髄内釘法)とを,骨格の成熟した人の大腿骨や股関節の関節包外骨折の治療について比較した.得られた結果は5つのカテゴリーに分類された.a)手術の詳細 b)骨折の固定の合併症 c)手術後の合併症 d)解剖学的な回復 e)最終的な結果.

検索方法:適切なランダム化試験をコクラン筋骨格−外傷グループのための一般的な検索方法で検索し,加えてエンダー釘法とハリス釘法の比較試験を特別に全ての関係する研究の参考文献リストから綿密に検索した.言語の制限は適応されなかった.

選択基準:全ての顆状突起頭部の釘(エンダー釘法とハリス釘法)と他のインプラント法の比較に関して確認されたランダム化もしくは準ランダム化比較試験.

データ収集と解析:方法論的な質は10項目の基準で評価されデータは全てのレビュアーによって独立に抽出された.違いはレビュアーによる議論で解決した.適切で可能なかぎり,データの蓄積が試みられた.エンダー釘とハリス釘のデータは別々に表現された.固定釘プレート法やスライディングヒップスクリュー法の2つのインプラント法のいくつかの違いはサブグループで調査した.

主な結果:11個のランダム化もしくは準ランダム化比較試験がレビューに含まれた.これらの試験のうちの10個がエンダー釘法と固定釘プレート法やスライディングヒップスクリュー法を比較したものであった.1個はハリス法の顆状突起頭部の釘とスライディングヒップスクリュー法とを比較したものであった.

顆状突起頭部の釘の唯一有利な点は深部創菌血症の率を減少させる点(0.9%対4.2%;オッズ比0.26,95%信頼区間0.12から0.56)であり,手術時間の長さ,手術の失血量も下げた.しかしながら,髄外インプラント法と比較して,再手術の率が上昇し(20.9%対5.5%;オッズ比3.78,95%信頼区間2.67から5.36),後になって起こる大腿部骨折の率が上昇した.エンダー釘法においては,スライデイングヒップスクリューに比べるとインプラントが大腿骨頭から離断する危険性もまた上昇した,固定釘プレート法との比較では差は認められなかった.釘による固定を中止することは高頻度の合併症(30%)であり,しばしば再手術の結果に陥った.

エンダー釘法はまた足の短縮,外旋変形の危険性を上昇させ,骨折以前の歩行能力への回復を妨げる可能性がある.顆状突起頭部の釘を施行している患者では膝の痛みの増強によって残存する痛みが増加することが明らかになった.顆状突起頭部の釘と髄外インプラント法の間で,死亡率に差はなかった.

結論:顆状突起頭部の釘法の手術中の結果における利点より,髄外インプラント,特にスランデイングヒップスクリュー法と比べて,骨折治癒の合併症や再手術率,残存する痛み,下肢の変形の増加の方が重視された.顆状突起頭部の釘の使用,初期のエンダー釘法は大腿骨転子骨折に対してもはや適応ではない.


Citation: Parker MJ, Handoll HHG, Bhonsle S, Gillespie WJ. Extracapsular proximal femoral fractures: condylocephalic nails (Ender or Harris nails) versus extramedullary implants (fixed nail plates or sliding hip screws). In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:福田泰代/今道英秋)