呼吸促迫症候群に対して人工換気を行っている早期産児における選択的高頻度ジェット換気と通常の人工換気の比較

Elective high frequency jet ventilation versus conventional ventilation in preterm infants mechanically ventilated for respiratory distress syndrome

Bhuta T, Henderson-Smart DJ

最終更新日:16/01/1998


目的:このレビューの目的は,呼吸促迫症候群(RDS)の新生児に対して高頻度ジェット換気(HFJV)の選択的(人工換気の開始後すぐに始める)使用が,通常の人工換気(CV)と比べて,副作用なく慢性肺疾患(CLD)の発生率を減少するかどうかを決定することであった.

検索方法:MEDLINEで1980年から1997年でMeSHとtext wordが'high frequency ventilation','high frequency jet ventilation','jet ventilation'で検索したランダム化試験が同定された.EMBASEデータベース,周産期試験のオックスフォード・データベース,コクラン共同計画の新生児レビューグループ比較臨床試験特別レジスター,コクラン・ライブラリーもまた検索した.最近のSPR/APS会議の抄録はハンドサーチした.情報はこの分野の専門家からも得,参考文献もチェックした.

選択基準:呼吸促迫症候群のある,妊娠35週未満の早期産児かつ,または2,000g未満の出生体重児で,選択的高頻度ジェット換気と通常の人工換気を比較したすべてのランダム化比較試験を系統的なレビューに組み込んだ.通常24時間を越える重症の呼吸促迫症候群に対して早期産児を助けるためにHFJVを使った試験や,一定の決めた時間HFJVを施行しその後CVに戻す試験は,このレビューには組み込まなかった.

データ収集と解析:コクラン新生児レビューグループの標準的な方法で,各々の試験の評価やデータの抽出が行われた.データは相対危険率(RR)と危険度差(RD)を使って分析した.1/RDよりnumber needed to treat(NNT)とnumber needed to harm(NNH)を計算した.

主な結果:3試験をあわせて解析をすると,HFJVは生存児の最終月経から36週時のCLDと関連することが示された[RR0.58(0.34,0.98), RD-0.138(-0.268,0.007), NNT7(4,90)].在宅酸素療法の使用は1研究(Keszler 1997)のみ評価されており,HFJV群では低率であった[RR 0.24(0.07,0.79), RD-0.176(-0.306,-0.047), NNT5(3,21)].全般的にHFJV群ではPVLの危険が高い傾向にあったが,有意ではなかった.サブグループ分析では,'低容量法'がHFJVの標準的プロトコールとなっているWiswell 1996の試験でPVLの危険は上昇し[RR5.0(1.19,21.04), RD0.250(0.069,0.431)],'高容量法'を使っているKeszler 1997の試験でPVLの頻度にRR0.42(0.14,1.30)と有意差はない.

全体的な解析では,すべてのグレードのIVHやグレード3や4のIVHによる新生児死亡率に有意差はなかった.'低容量法'が使われたサブグループで,IVHのすべてのグレードと,グレード3または4のIVHの危険が,有意差はないものの上昇する傾向を認めた.

結論:全体的な解析ではHFJVの選択的人工換気群では呼吸器に対する結果に有益性が示された.心配なのは,HFJVで人工換気をした時に低い平均気道圧で使用した1試験では,急性脳障害が有意に上昇した.今までのところ,どの試験でも長期間の呼吸器や神経学的発達の結果はない.HFJVを使って安全に日常的に早期産児の人工換気をするための最も良い条件が,さらなる研究で確定されなければ,HFJVを使った人工換気をRDSの早期産児に使うのは勧められない.


Citation: Bhuta T, Henderson-Smart DJ. Elective high frequency jet ventilation versus conventional ventilation in preterm infants mechanically ventilated for respiratory distress syndrome. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:矢野 礼/佐藤孝道)