疥癬の薬物療法

Treating scabies

Walker GJA, Johnstone PW

最終更新日:19/08/1997


目的:疥癬に関する局所の,あるいは,全身的な薬剤治療の有効性を評価する.

検索方法:MEDLINEやEMBASE,コクラン感染症グループの比較臨床試験特別レジスター,軍事記録,従来の医薬データベース,世界的な第一人者となる専門家,あるいは,製薬会社に要求した未公開の試行データを含めたコクランの検索方法.

選択基準:すべてランダム化比較試験である.試験は,あらかじめ設定されていた判定基準と比較して,2人の別々の評価者によって評価された.

データ収集と解析:37の試験が確認され,そのうちの27の試験は定められた判定基準を満たしていなかった.8つの試験(社会的な関与も含まれる)は判定基準を満たしており,継続中である2つの試験は,結果が得られしだい評価されるであろう.

主な結果:1つの小規模なプラセボを対照群とした試験によって,イベルメクチンが,治療後7日間,治療評価に従って何も侵襲を加えないよりも,効果的であることが分かった.ペルメトリンはクロタミトンよりも(臨床的,寄生虫的治療の面で)効果的であり,また,六塩化ベンゼンよりも(臨床的および寄生虫的,主観的治療の面で)効果的なように思えた.臨床的治療の面で評価すると,クロタミトンと六塩化ベンゼンとの間に違いはないように思えた.重大な神経学的副作用は報告されておらず,過敏反応のような皮膚の副作用が,侵襲を加えた群,あるいは,対照群のどちらにも同様に報告された.以下に述べる様々な単独試験が評価された.経口対局部治療の効果(イベルメクチン 対 安息香酸ベンジル),治療賦形剤(豚脂 対 コールドクリーム),集団治療(イベルメクチン)など.これらの研究は1つの効果を論証するのに十分なものではなかった.マラチオンのランダム化比較試験はいまのところ確認されていない.

結論:現在のところ,ペルメトリンが六塩化ベンゼンやクロタミトンよりもより効果的であるという結論になっている.しかしながら,比較上の利点は,すべての試験を通して一貫して見られたわけではなく,今回探したもっとも大きな試験でも,統計学的な有意差は認められなかった.ペルメトリンを選択したのは,六塩化ベンゼンと比較して安全なのではないかという考えのもとに成り立っているのであろうが,試験に基づいたものではない.多くの問題が未解決のままであり,とりわけ,ペルメトリンと比較したイベルメクチンやマラチオンの安全性や効能,社会集団での有効な治療指針,局所治療に用いられるいろいろな賦形剤の有効性,様々な製剤あるいは調剤によっておこる毒性のより厳密な定量化,などが未解決のままである.


Citation: Walker GJA, Johnstone PW. Treating scabies. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:矢野 礼/吉村 学,鶴岡浩樹)