精神分裂病患者に対するフルフェナジン デポ剤とフルフェナジン経口剤の比較

Depot fluphenazine versus oral fluphenazine for those with schizophrenia

Adams CE, Eisenbruch M

最終更新日:27/08/1997


目的:精神分裂病患者に対するフルフェナジン デポ剤とフルフェナジン経口剤での治療を比較する.

検索方法:Biological Abstracts,コクラン精神分裂病グループの臨床試験データベース,EMBASE,LILACS,MEDLINE,PsycLIT,SCISEARCHの電子検索,同定されたすべての研究の引用文献のハンドサーチ,当該薬剤の製造業者への連絡を行った.

選択基準:精神分裂病患者に焦点をあてフルフェナジン経口剤とエナント酸フルフェナジンあるいはデカン酸フルフェナジンを比較したランダム化比較試験.

データ収集と解析:1人目のレビュアー(CEA)が臨床試験の引用文献を点検し,2人目のレビュアーが信頼性を検討するために20%の引用文献の点検を独立して行った.重要であると意見が一致した臨床試験の全文を得て,同様の方法でデータを抽出した.臨床試験はコクラン共同計画ハンドブック(Mulrow 1997)で述べられているように3つのカテゴリーに割付けた.データはintention-to-treatに基づいて解析し,可能であればパラメトリックな連続データを提示した.不均質性の検定が行われた.

主な結果:データは非常に限られたものであった.塩酸フルフェナジンとそのデポ剤とでは全体的な機能の印象,再燃/再入院,初期の治療に対する反応の悪さ,臨床試験からの早期脱落,抑うつ気分/自殺などの帰結変数について違いはなかった.運動障害,不快な口渇,睡眠障害,体重増加といった副作用はどちらのグループにも同じようにみられた.精神状態,社会的機能,ケアに対する満足感の直接測定は,されていないか,いかなる分析もできないような形でしか提示されていなかった.

結論:6つの研究はすべてフルフェナジン経口剤ですでに安定している精神分裂病患者あるいは臨床試験を継続することに満足していると思われる精神分裂病患者を対象としている.このレビューからのデータが薬物治療のコンプライアンスがさらに問題となる日常の精神医療現場にどのように当てはまるかについては議論の余地がある.フルフェナジン デポ剤の使用は依然として臨床試験による組織的な評価よりも臨床的な判断に基づいている.大規模で実践的なランダム化比較試験が久しく待望されている.


Citation: Adams CE, Eisenbruch M. Depot fluphenazine versus oral fluphenazine for those with schizophrenia. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:糸目千穂/竹内 浩,古川壽亮)