大腿骨頚部骨折手術における深部静脈血栓症と肺塞栓症に対するヘパリン,低分子量ヘパリンと理学療法による予防

Prophylaxis using heparin, low molecular weight heparin and physical methods against deep vein thrombosis and pulmonary embolism in hip fracture surgery.

Handoll HHG, Farrar MJ, McBirnie J, Tytherleigh-Strong G, Awal KA, Milne AA, Gillespie WJ

最終更新日:07/08/1997


目的:老年者での大腿骨近位端骨折手術後の深部静脈血栓症や肺塞栓の予防に対する,標準のすなわち分解されていないヘパリン(U)と低分子量ヘパリン,血栓−塞栓用ストッキングやふくらはぎや足用の圧縮ポンプなどの理学療法の有効性を調べる

検索方法:出版されている論文や本の引用文献の検索と同様に,コクラン筋骨格−外傷グループの一般的検索法に添った見解の応用により,適切なランダム化比較試験や準ランダム化比較試験を確定し,さらに同じ分野の同僚や試験者との情報交換により調査した.

選択基準:大腿骨近位端骨折の手術をうけた患者の深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症の発生率を抑えるために,ヘパリンなどの注射用抗凝固剤を使用したり,ふくらはぎや足用ポンプなどの理学療法を行って報告されているすべてのランダム化比較試験や準ランダム化比較試験を対象とした.

データ収集と解析:選択基準の概略に適合する26の試験は全て,方法論的な質や次のアウトカムで出されたデータかどうかすくなくとも二人の 評議者によってそれぞれ独立に評価された.

アウトカムとしては深部静脈血栓症,肺塞栓,研究中または手術後六か月以内の死亡,血栓症後の下肢,創の合併症,全身合併症及び入院期間である.この試験は4つの主なカテゴリー(ヘパリン対コントロール,機械的対コントロール,低分子量ヘパリン対標準ヘパリン,その他もろもろ)にグループ分けされ,可能な場合にはそれらの結果は共同管理された.研究の質とアウトカムの関連に対し補足の解析を行った.

主な結果:10の試験での826人の患者による標準ヘパリンとコントロールとの比較と,4つの試験による471人の患者での低分子量ヘパリンとコントロールとの比較した.その結果はヘパリンが大腿骨頚部骨折手術後の下肢深部静脈血栓症の発生率を121/511(24%)対203/519(39%),オッズ比では0.41(95%信頼区間は0.31〜0.55)と減少させたことを示した.このグループでは肺塞栓の予防におけるヘパリンの有効性を確信するにはデータが不十分であった.ヘパリン使用グループで有意差なしではあるが全死亡率の増加があった.(46/420(11%)対35/423(8%),オッズ比では1.39,95%信頼区間は0.86〜2.23)でデータは創部の合併症を含めて他の結果に対してもヘパリンのいかなる効果も証明するには不適切であった.644人の患者による5つの試験で,低分子量ヘパリンが標準ヘパリンよりすぐれていることを立証するための証拠が不十分ではある結果が得られた.ヘパリンを評価するための試験の大部分が方法論的欠陥を有していた.442人の患者だけによる機械的注入装置使用の4つの試験もすべて方法論的に欠点があった.このように共同管理されている結果は注意深く考察される必要がある.機械的注入装置は深部静脈血栓を防ぐかもしれない.(12/202(6%)対42/212(19%),オッズ比は0.24,95%信頼区間は0.13〜0.44).限られた役立つデータが可能性のある利点を示してはいるが,それらは肺塞栓発生率や全体的死亡率にいかなる効果をも確立するには不適切だった.標準的な装置の調整は肌の擦りむきを防ぐためにも装置をきちんとつけるためにもすすめるに価値があると思われる.

結論:人をひきつけるようなはっきりとした推薦をするには役立つデータが不足している.全体的に,最新の実行為に基づく試験の質は極めてがっかりさせるものである.注射用抗凝固剤(標準ヘパリンと低分子量ヘパリン)は下肢の深部静脈血栓の形成を防ぐ.それらは致死的肺塞栓を防ぐかも知れないが,データが確認するのにいまは不適当である.全死亡率増加の可能性は割り引いて考えられるものではない.臨床的に重要な,例えば創部の合併症のような副作用を確認するためのデータの不足は全体的なヘパリンの有用性を確信できるものではない.標準ヘパリンと低分子量ヘパリンを区別するには薬用量,投与時期,投与期間など不適当なデータであった.足やふくらはぎに空気圧をかける装置の使用は深部静脈血栓を予防すると考えられ,そして肺塞栓や死亡率を減少させるかもしれない.これらの装置を評価するためのこれらの試験では貧弱なプロトコールの実施が注目に値した.直接的なヘパリンとの比較と同様に弾性ストッキングのような普通の方法も含めた機械的方法の上質の試験が考えられるべきであった.


Citation: Handoll HHG, Farrar MJ, McBirnie J, Tytherleigh-Strong G, Awal KA, Milne AA, Gillespie WJ. Prophylaxis using heparin, low molecular weight heparin and physical methods against deep vein thrombosis and pulmonary embolism in hip fracture surgery.. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:横田恭子/河合 徹,白石由里)