クローン病寛解維持のための副腎皮質ステロイド療法

Corticosteroid therapy for maintenance of remission in Crohn's disease

Steinhart AH, Ewe K, Griffiths AM, Modigliani R, Thomsen OO

最終更新日:23/06/1998


目的:クローン病の寛解維持における従来の副腎皮質ステロイド全身投与療法の有効性と安全性を評価する.

検索方法:1966年から1998年5月の間に英語,フランス語,スペイン語,イタリア語,およびドイツ語で出版された研究をオンライン参考文献一覧データベースであるMEDLINEからコンピュータを用いて検索した.コンピュータを使用した検索からもれている研究を特定するために,関連した研究の参考文献リストのハンドサーチを行った.1985年から1997年までの主要な消化器系学会の抄録も,未刊行の研究を同定するために,ハンドサーチを行った.コクラン比較臨床試験レジスターとコクラン炎症性腸疾患グループの比較臨床試験特別レジスターの検索も行なった.

選択基準:全ての年齢を対象とした,CDAI<150,あるいは無症状かごく軽度の症状しか試験導入時に発症していないことをクローン病の寛解と定義しているランダム化二重盲検プラセ比較試験.従来の経口副腎皮質ステロイドによる試験的な治療(ブデソニド,フルチカゾンなどを除く).臨床症状の再発を結果の指標として重要視した.

データ収集と解析:4人のレビュアーにより適切な(採択基準を満たす)研究が選択され,データは,規格化されたデータ抽出フォームに従って抽出された.適切性またはデータ抽出における意見の不一致は合意により決定した.抽出した個々の研究のデータはそれぞれ2x2表に変換された.研究間の有意な不均一性の検定に,カイ二乗検定を使用した.2x2表は,コクラン・マンテル・ヘンツエルによって記述されている[メタ・アナリシスにおけるオッズ比]集積オッズ比と95%信頼区間を用いてそれぞれの試験をまとめた統計値を算出した.データを蓄積するために固定効果モデルを使用した.

主な結果:当初は4つの研究が採択基準に合致すると判断された.追加情報で,後にそのうちの1つの研究が二重盲検でない事がわかり除外された.

6ヶ月,12ヶ月,および24ヶ月の時点で解析されている総患者数は,副腎皮質ステロイド投与患者(群)がそれぞれ142人,131人,95人であり,コントロール群が161人,138人,87人であった.

積極的な治療における6ヶ月,12ヶ月,および24ヶ月の時点での再発のオッズ比および一致95%信頼区は,それぞれ0.71(0.39,1.31),0.82(0.47,1.43),0.72(0.38,1.35).1人の再発を予防するためのNNTはそれぞれ24,35,15であった.

結論:他覚的に非活動性のクローン病患者に対する従来の副腎皮質ステロイド全身投与は,24ヶ月の追跡期間中再発のリスクを減少させなかった.


Citation: Steinhart AH, Ewe K, Griffiths AM, Modigliani R, Thomsen OO. Corticosteroid therapy for maintenance of remission in Crohn's disease. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:日野村 靖/今道英秋)