老年者の慢性脳疾患に伴う認知障害,情緒障害,行動障害の治療におけるCDP-choline(シチコリン)治療に関するレビューの要約

CDP-choline in the treatment of cognitive and behavioural disturbances associated with chronic cerebral disorders of the aged

Fioravanti M, Yanagi M

最終更新日:09/01/1998


目的:老年者における慢性脳疾患に伴う認知障害,情緒障害,行動障害の治療におけるシチコリン治療の評価を目的とする.

検索方法:研究のCDCIGに登録された,動物実験以外のすべてのランダム化比較試験の中から,CDP-choline/CDP,Citicoline,Cytidine Diphoshate Choline,Diphosphocholineの語で検索した.レビュアーは,互いに独立にThe Psychlit(1974-1996),Psychiatry(1980-1996),MEDLINE の電子的データベースを検索したが調査員によりそれぞれに調べられた.また,レビュアーはシチコリンのメーカーとも連絡を取った.

選択基準:慢性脳疾患に起因する認知障害に対するシチコリン関連の研究で,ヒトを対象とし,双盲法プラセボ対照ランダム化比較試験であることが明らかな臨床試験はすべてレビューの中に含めた.

データ収集と解析:二人のレビュアーが互いに独立して,採択した研究をレビューし,データを抽出し,プールすることが適切かつ可能な場合はプールして扱った.プールされた全体のオッズ比(95% CI)と平均差(95% CI)を算出した.今回採択した研究の中には,利用しうるintention-to-treatデータはなかった.

主な結果:採択した研究のうち7件は,対象観察期間が20〜30日間,1件は6週間,2件は2〜3ヶ月におよぶサイクルを用い,1件は3ヶ月以上の長期継続投与を観察していた.これらの研究はいずれも,服用量,対象患者の選定基準,アウトカムの評価法などに関して不均一であった.注意力の範囲,記憶テスト,行動の評価尺度,臨床的全般印象,耐容性等に関する結果が示されていた.注意力に対するシチコリンの有効性に関しては有意の証拠はみられなかった.記憶機能と行動に関しては,軽度だが,有意の改善がみられた.臨床的全般印象の改善に関しては,プラセボ群に対する,シチコリン群のオッズ比は8.89(5.19,15.22)であった.薬に対する耐容性は良好であった.

結論:シチコリンは,少なくとも短期間の成績では,記憶と行動に対しポジティブな効果があるという若干の証拠がえられた.全般的印象の改善に関しては,より強い証拠が示されたが,研究期間が短いため,まだ証拠とするには不十分である.脳血管障害による2次的認知障害の患者に対する治療効果に関しては,より均一な治療成績が証明された.

本治療法の適応となる疾患が慢性かつ不可逆的であることを考慮すれば,治療期間がもっと長期の他の研究を実施することが望ましい.


Citation: Fioravanti M, Yanagi M. CDP-choline in the treatment of cognitive and behavioural disturbances associated with chronic cerebral disorders of the aged. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:仲川三春/別府宏圀)