妊娠時における細菌性膣症のマネージメント

The management of bacterial vaginosis in pregnancy

Brocklehurst P, Hannah M, McDonald H

最終更新日:29/07/1998


目的:妊娠時における細菌性膣症のマネージメントにおける抗生剤の効果を症状の改善と,周産期の有害事象の発症の減少に関して評価する.もし抗生剤が有効であればいかなる抗生剤のレジメが最も有効かも検討する.

検索方法:このレビューはコクラン妊娠と出産グループが総括して開発した検索方法によった.

選択基準:細菌性膣症の妊婦において,ひとつの抗生剤使用レジメをプラセボあるいは非治療群とを比較したすべてのランダム化比較試験,あるいは2つ以上の異なる抗生剤使用レジメを比較した全てのランダム化比較試験.レビューの特異的なアウトカムに至る以前のアウトカムのデータを示している試験も含めた.

データ収集と解析:データは3人のレビュアーによって独立して,事前に定められたデータ収集形式にしたがって発表された報告から取り出された.情報がない場合は著者に確認した.

主な結果:5つの研究がレビューに含まれた.抗生剤は,治療後の”治癒判定”によって判断すると,妊娠中の細菌性膣感染症の除去に著効を示した(オッズ比0.22 95%信頼区間0.17-0.27).妊娠中の細菌性膣症の治療効果は妊娠37週以前の出産の発生を減らしているかもしれない(オッズ比0.78 95%信頼区間0.60-1.02).以前に早産を経験している妊婦によるサブグループでは妊娠37週未満の早産の予防が顕著であった(オッズ比0.37 95%信頼区間0.23-0.60).しかしながら,この出産の遅延が新生児の健康状況の改善と関連しているか否かははっきりしていない.

結論:【診療への示唆】

現在までのエビデンスは早産の予防のために細菌性膣症に対して全ての妊婦にスクリーニングと治療を行うことは利益がないことを示唆している.過去に早産の経験のある女性においては妊娠早期に無症候性の細菌性膣症をとらえ治療することが,こうした女性の次の早産(37週未満の出産)の割合を予防するかもしれない示唆がいくつかある.これが新生児の健康状況の改善と関連しているか否かははっきりしていない.現在のところ,妊娠時の細菌性膣症のスクリーニングを政策としてはじめる正当性に乏しい.

【研究への示唆】

新生児死亡や脳障害や慢性的肺疾患といった疾患発症における細菌性膣症の治療効果を決める大規模な試験が早急に必要である.このレビューはおそらく効果のある抗生剤投与のレジメは全身投与でメトロニダゾールを含んでいることを示唆している.加えて,このようなプログラムがすでに過去に早産を経験している女性にとってアウトカムを改善するかどうかを調査することが適切かもしれない.


Citation: Brocklehurst P, Hannah M, McDonald H. The management of bacterial vaginosis in pregnancy. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:後藤忠雄/宮本英樹)