糖尿病における高血圧の治療

Antihypertensive therapy in diabetes mellitus

Fuller J, Stevens LK, Chaturvedi N, Holloway JF

最終更新日:28/08/1997


目的:糖尿病患者の血圧を低下させる薬理学的および非薬理学的両方の介入の有効性を評価する.評価は,全ての原因の死亡率,心血管系疾患,脳卒中,虚血性心疾患,腎臓病を含む疾患別死亡,糖尿病の大血管及び微小血管合併症に関連する罹患率,そしてさらに介入による副作用,生活の質(QOL)と福利への影響,についてである.

検索方法:用いられた検索方法は,EMBASEやMEDLINEなどの電子化データベースを用いて糖尿病患者における降圧治療のあらゆる試験を求めて検索することであった.さらに,心血管系疾患,脳卒中,高血圧,および腎臓病の分野の専門雑誌の検索も行った.

選択基準:すべての試験は,二人の査定者によって個々に検討された後このレビューに含めるのにふさわしいか(適格性)が議論された.これらの方法論的な質は,無作為化法,盲験法の詳細や,Intention to treat解析法が用いられているかどうかにより評価された.このレビューに含まれる試験はすべて,糖尿病の対象者を含む特定のエンドポイントに対する降圧治療のランダム化比較試験である.

データ収集と解析:割り当てられた治療群別にそれぞれの評価方法を示した糖尿病患者の人数のデータを,過去の出版論文または,それができなければ生データのいずれかを得て探し,Intention to treat方法で解析した.これらのデータが有効に得られない場合,Per Protocol解析の結果が用いられた.介入の治療効果をプラセボ群と比較するため,全死亡率,心血管疾患の死亡率と罹患率のオッズ比(ORs)と95%信頼区間(CIs)をそれぞれの試験に対して計算し,要約方法としてピートのオッズ比を用いたメタ・アナリシスが行われた.

主な結果:最初の検索で760の参考文献を得て,そのうち適切な試験は23(一次予防3,二次予防20)認められ,これらの試験のうち15が解析に使えるデータを持っていた.一次予防の試験においては,全死亡率,心血管系疾患に対する要約オッズ比(95%信頼区間)は,それぞれ0.85(0.62,1.17)と0.64(0.50,0.82)であった.長期間(つまり1年以上の追跡)の二次予防の7試験における全死亡率に対する要約オッズ比(95%信頼区間)は,0.82(0.69,0.99)であった.これらの試験のうち心血管系疾患の死亡率と罹患率のデータが得られたのは2つだけで,その要約オッズ比(95%信頼区間)は,0.82(0.60,1.13)であった.解析に使えるデータが得られた,短期間(つまり1年以内未満の追跡)の二次予防の試験は5つあった.全死亡率と心血管系疾患に対する要約オッズ比(95%信頼区間)は,それぞれ0.64(0.50,0.83)と0.68(0.43,1.05)であった.

結論:1次予防の介入は,糖尿病患者における心血管系疾患に対しては有効性を示したが,全死亡率に対しては有効でなかった.短期長期両方の二次予防についてこのメタ・アナリシスは,糖尿病患者の全死亡率に対して有効性を示した.しかしながら,心血管系疾患のアウトカムに関する情報が不足しているため,このエンドポイントについて同様の有効性を示すためのメタ・アナリシスの検出力はおそらく低下してしまった.このことは,全死亡率と心血管系疾患のアウトカムに対する降圧治療についてのランダム化比較試験の発表されている全てのデータは糖尿病患者に限らない高血圧症患者の試験から得ているという事実もあり,糖尿病患者における降圧の介入の有効性を調べるより質の高い試験の必要性を強調している.


Citation: Fuller J, Stevens LK, Chaturvedi N, Holloway JF. Antihypertensive therapy in diabetes mellitus. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:野崎香織/浅井泰博,糸矢宏志)