非塞栓性虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作後の,抗凝固療法と非抗凝固療法の比較

Anticoagulation versus no anticoagulation following non-embolic ischaemic stroke or transient ischaemic attack

Liu M, Counsell C, Sandercock P

最終更新日:10/09/1997


目的:長期間の抗凝固療法が,先にあったと推測される非塞栓性虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作の後に,効果的でかつ安全であるかどうかを決定する.

検索方法:コクラン脳卒中レビューグループの検索方法に抗凝固療薬を販売している製薬会社との個人的な接触を加味する.

選択基準:非塞栓性の虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作が先にあったと推測される患者に対して,少なくとも1ヶ月間の,いろいろな強度の抗凝固療法と非抗凝固療法を比較した,全ての交絡のないランダム化比較試験と準ランダム化比較試験を対象として選んだ.

データ収集と解析:含まれた試験は二人の査読者によって独立的に選択され,且つ,同じ二人の査読者によって各々のアウトカムが抽出され,データの二重チェックが行なわれた.オッズ比を併合するためにはピート法が用いられた.全ての分析は,可能なかぎり,'intentio-to-treat'で行なわれた.

主な結果:1214名の患者を含んだ9つの試験が,我々の包含基準に合致したが,全ての試験の方法論的な質は低かった.全ての試験は事前にルーチンでCTスキャンが行われており,抗凝固のモニターの為に国際標準比が用いられている.経口ワーファリン,フェニンジオンまたはジクマロールが,プロトロンビン時間をコントロールの2〜3倍を目標として対照と比較されたが,服薬遵守率は低かった.抗凝固療法は,死亡数または治療への依存性(オッズ比 [OR] 0.83, 95%信頼区間 [CI] 0.52-1.34),総死亡数(オッズ比 0.95, 95%信頼区間 0.72-1.23),血管死(オッズ比 0.86, 95%信頼区間 0.66-1.13)のオッズを有意に下げるようには働かず,虚血性/不明の再発性脳卒中のリスクを下げることもなかった.しかしながら,抗凝固療法は大出血のオッズを高めるように働いた.致命的頭蓋内出血 (オッズ比 2.54,95%信頼区間 1.19-5.45),頭蓋外の大出血 (オッズ比 4.87,95%信頼区間 2.50-9.49).抗凝固療法は,従って余分に1000人年あたり11名の致死的頭蓋内出血と25名の頭蓋外大出血に関連している.全体的には,「非致死的脳卒中または血管死」または「非致死的脳卒中または非致死的心筋梗塞または血管死」の併合されたアウトカムについて,有意な効果はなかった.治療によって引き起こされるこれらの事象だけに限定するように分析を行っても,結果を有意に変化させることはなかった.

結論:非塞栓性の虚血性脳卒中またはTIAが推定される患者に対する,長期間の抗凝固療法が効果的であるという明らかなエビデンスはない(臨床的に重要な利益を除外することはできないが)が,出血の危険性が有意に高くなるというエビデンスがある.近代的な神経画像処理によって脳内出血が除外された患者に対して,よく管理された低用量の抗凝固療法(抗血小板療法あり または なし)と抗血小板療法単独を比較する,更なる試験が必要である.


Citation: Liu M, Counsell C, Sandercock P. Anticoagulation versus no anticoagulation following non-embolic ischaemic stroke or transient ischaemic attack. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:水谷武夫/和座一弘,内堀充敏)