急性気管支炎に対する抗生物質

Antibiotics for Acute Bronchitis

Becker L, Glazier R, McIsaac W, Smucny J

最終更新日:24/08/1997


目的:急性気管支炎と臨床的に診断された患者に対する抗生物質治療がアウトカムの改善と重篤な副作用に関係するのかどうかを明らかにする.

検索方法:"bronchitis"と,"randomizsed controlled trial (PT)","random allocation","double blind method","single blind method"のMeSH termを用いて1966年から1996年までのMEDLINEの検索を行った.全く同様の検索方法で1974年から1996年までEMBASE(Excerpta Medica online)のデータベースを検索した.我々はまた関連する研究,総説,教科書そして著者の個人的に収集した文献の参考文献リストも調べた.1989年から1996年のScience Citation Index(SCISERCH)のオンライン版を使い,他の方法で見い出される重要な研究に関連する更なる研究を探し出すよう努力した. 

選択基準:急性気管支炎患者が抗生物質かプラセボのどちらかの治療にランダムに割付けられたすべての試験.

データ収集と解析:2人のレビュアーがタイトルと要約を使って,明らかにレビューの包含基準に合わない試験を除外した.この最初のふるいを通過した文献は,3人の著者によってそれぞれの文献の方法の部分のみがレビューされた.同じ3人の著者はそれぞれの試験からデータを抽出し,方法論的な質を評価したが,著者名,施設名,試験が掲載された雑誌名は隠したままであった.見解の相違は話し合いや全体の意見の一致で解決された.

主な結果:8つの研究が包含基準に合致し,抽出すべきデータをもっていた.これらの研究は750人の患者を含み(年齢は8歳から65歳以上まで),喫煙者,非喫煙者を含んでいた.抗生物質にはドキシサイクリン,エリスロマイシン,トリメトプリム/スルファメトキサゾールがあった.種々の測定項目が評価された.多くの場合,群間で統計学的有意差のある結果が出たデータのみが明確に報告される.pooled analysisでは抗生物質の投与を受けている患者は,プラセボの投与を受けている患者より少しだけ良い結果が得られた.抗生物質の投与を受けている患者は後の経過観察で良くないと感じることが少なく(OR 0.42,95%CI 0.22〜0.82),改善がないとする医師の評価が少なく(OR 0.43, 95%CI 0.23〜0.79),肺の異常所見が少なく(OR 0.33,95%CI 0.13〜0.86),また,より早く仕事や日常生活に戻った(WMD=0.744日より早く:95%CI 0.16〜1.32).抗生物質で治療された患者は有意に悪心,嘔吐,頭痛,皮疹,腟炎などの副作用が有意に多かった(OR 1.64, 95%CI 1.05〜2.57).

結論:抗生物質は急性気管支炎の治療に対してある程度有益な効果があるようだが,対応する副作用という小さなリスクも伴う.抗生物質の有益性はこの分析の中で過大評価されているかもしれない.というのは出版された報告というのは統計学的に有益性がある結果についてだけ,完全なデータを含む傾向があるからである.


Citation: Becker L, Glazier R, McIsaac W, Smucny J. Antibiotics for Acute Bronchitis. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:福田泰代/八森 淳,橋本 淳)