妊娠中の糖尿病に対する非常に厳格なコントロールと厳格なコントロールの比較

Very tight vs tight control for diabetes in pregnancy

Walkinshaw SA

最終更新日:16/07/1996


目的:確立されたインスリン依存性の糖尿病において,非常に厳格な血糖コントロールは妊娠と新生児の予後を改善するかどうかを判定する.

検索方法:コクラン妊娠と出産グループにより維持・更新された臨床試験の登録.コクラン糖尿病グループの検索方法によって,将来,追加試験が確認されるだろう.

選択基準:妊娠中の糖尿病に対する非常に厳格なコントロールと厳格なコントロールを比較した,すべての出版・未出版のランダム化比較試験.非常に厳格重なコントロールの定義についてコンセンサスが得られていないので,2つまたはもっと異なる方法を比較した個々の試験の中ではこの定義にいくらか主観が入っている.

データ収集と解析:試験の計画と適用に関するデータは採用された研究の特徴を概略化した,予め特定した表より抽出された.結果は予め特定された比較表に抜粋された.

主な結果:母体の低血糖は,糖尿病のコントロールを非常に厳格に行った患者でより多くみられた.どちらの群においても,周産期予後がよくなる根拠はなかった.

結論:2つの試験は比較が難しく,非常に厳格という定義にわずかに異なるものを用いている.それにもかかわらず,非常に厳格なコントロールの利点と,低血糖に関する潜在的な害を示唆するデータについての力強い論拠はない.新生児の代謝面での利点に関するデータは興味深いが,重篤な新生児の罹患率の予防に関する臨床的価値ははっきりしない.肩甲難産など,多くの重要な臨床的予後は調べられていない.非常に厳格なコントロールは,妊娠糖尿病患者のライフスタイルに実質的な影響を与えるかもしれないし,窮迫した低血糖のリスクを増加させるだろうから,このようなコントロールを求めるインスリン治療の方法において,利点の根拠を欠くことは注意しなくてはならない.妊娠糖尿病患者に対する血糖のいろいろな程度のコントロールの,糖尿病と周産期の利点に言及するさしせまった必要性が残されている.結果の評価判定には,子前症,巨大児,帝王切開率,肩甲難産率,周産期死亡,新生児の呼吸および代謝の合併症など,産科医と小児科医に興味があるものを含むべきである.


Citation: Walkinshaw SA. Very tight vs tight control for diabetes in pregnancy. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:中村和宏/佐藤孝道)