新生児の脳室内出血に対する反復腰椎穿刺または脳室穿刺

Repeated lumbar or ventricular punctures in newborns with intraventricular hemorrhage

Whitelaw A

最終更新日:25/07/1998


目的:脳室内出血後水頭症(PHH)となるリスクのある,または実際に水頭症となりつつある新生児に対して脳脊髄液の穿刺(腰椎穿刺または脳室穿刺)を繰り返し実施することで,児の永久的なシャント依存性,神経発達障害,あるいは児死亡などのリスクが減少するかどうかを決定すること.この治療法は,脳脊髄液を繰り返し穿刺して蛋白質や血液を除去することにより,脳脊髄液が吸収される経路の閉塞が取れるという仮説に基づいている.

検索方法:1976年以降の小児科,脳神経外科および一般医学雑誌をハンドサーチし,同時にMEDLINEの検索を行った.著者とも連絡を取った.

選択基準:4つの比較試験(これに関する論文は5つ出版されている)が確認され,うち3つはランダム化試験,4つめは交互割りつけを用いていた.2試験は脳室内出血後(IVH)の新生児に対する反復腰椎穿刺の評価,2試験は脳室内出血に続いて進行性の脳室拡大を認めた児に対する反復脳脊髄液穿刺の評価を行っていた.

データ収集と解析:患者の選択方法と割りつけ方法の詳細,および治療方法を抽出した.考察したエンドポイントは脳室-腹腔シャント造設,死亡,障害,多発障害と死亡または障害であった.

主な結果:これらの研究はほぼ同様の疑問点に立脚し,ほぼ同様の治療が行われていたため,治療効果の判定にあたってはこれらの研究結果をまとめて用いることができた.反復脳脊髄液穿刺を保存的治療と比較すると,シャント造設,死亡,障害,多発障害に対するオッズ比およびリスク比は1.0にごく近い値となり,統計学的に有意な差を認めなかった.また,この治療法が脳脊髄液への感染のリスクを高めるというエビデンスもある.

結論:脳室内出血後水頭症となるリスクのある,または実際に水頭症となりつつある新生児に対して早期に反復脳脊髄液穿刺を行うことは推奨できない.


Citation: Whitelaw A. Repeated lumbar or ventricular punctures in newborns with intraventricular hemorrhage. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:吉村 学/濱崎圭三)