メジャートランキライザーによって誘発された遅発性ジスキネジアに対するコリン作働薬投与

Cholinergic medication for neuroleptic-induced tardive dyskinesiaia

McGrath JJ, Soares KVS

最終更新日:18/02/1997


目的:精神分裂病または他の慢性精神疾患の患者において,メジャートランキライザーによって誘発された遅発性ジスキネジアにコリン作働薬(Arecoline, コリン, Deanol, レシチン, メクロフェノキサート, フィゾスチグミン, RS86)を投与することが臨床的な改善をもたらすかどうかを検討する.

検索方法:Biological Abstracts, コクラン精神分裂病グループの臨床試験データベース, EMBASE, LILACS, MEDLINE, PsycLIT, SCISEARCHの電子検索がおこなわれた.さらに確認されたすべての研究の引用文献のハンドサーチをおこない,包含されたすべての臨床試験の筆頭著者に連絡を取った.

選択基準:検索によって同定された研究が,精神分裂病または他の慢性の精神疾患で,メジャートランキライザーによって誘発された遅発性ジスキネジアの患者をランダムにコリン作働薬かプラセボ(または介入なし)かに割り当てた比較試験であれば採用した.

データ収集と解析:このレビューには7つの異なった研究(8つの文献)が包含された.他に10の臨床試験は現在,著者からの更なるデータを待っている.各レビュアーがこれらの臨床試験から互いに独立にデータを抽出した.オッズ比または平均差とその95%信頼区間が推定された.ドロップアウトした患者は改善なしと見做された.

主な結果:この研究ではDeanolまたはレシチンをプラセボと比較した場合,有意差は認められなかった.Deanolを用いた2つの臨床試験のデータからは実薬グループでより多くの副作用が示された.コリン作働薬を投与された患者に種々の消化器系の副作用(食欲不振,嘔気,嘔吐,下痢,腹痛),鎮静,不快な体臭が報告された.Deanol対プラセボの交差試験で一人が急性の誤嚥症状で死亡した.

結論: このレビューではメジャートランキライザーによって誘発された遅発性ジスキネジアの治療に対して,コリン作働薬を投与することの確かな証拠は示されなかった.コリン作働薬を投与された患者の方に,プラセボと比べてわずかに効果が得られたけれども,サンプルサイズが小さいために累積されたデータは決定的なものではないと解釈すべきであろう.遅発性ジスキネジアの治療にコリン作働薬を使用しようと考えている臨床家と臨床試験家は,この薬物に関連した副作用が多いのに対し,有効性のエビデンスが不足していることを充分に考慮すべきであろう.


Citation: McGrath JJ, Soares KVS. Cholinergic medication for neuroleptic-induced tardive dyskinesiaia. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:糸目千穂/堀 士郎,古川壽亮)