メジャートランキライザーによって誘発された遅発性ジスキネジアに対するGABA作動薬投与

GABA agonist medication for those with neuroleptic-induced tardive dyskinesia

Soares KVS, McGrath JJ, Deeks JJ

最終更新日:02/06/1997


目的:メジャートランキライザーによって誘発された遅発性ジスキネジアと精神分裂病や他の慢性の精神疾患患者に対するGABA作動薬(Baclofen,gamma-vinyl-GABA,gamma-acetylenic-GABA,Progabide,Muscimol,Sodium Valproate,THIP)の臨床上の有効性を判定する.

検索方法:Biological Abstract,コクラン精神分裂病グループの臨床試験データベース,EMBASE,LILACS,MEDLINE,PsycLIT,SCISEARCHの電子検索,同定したすべての研究の引用文献をハンドサーチし,それぞれの臨床試験の筆頭著者に連絡をとった.

選択基準:メジャートランキライザーによって誘発された遅発性ジスキネジアを伴う精神分裂病あるいは他の慢性の精神疾患患者を対象とし,GABA作動薬とプラセボまたは無介入のものを比較したランダム化比較試験.8個の研究が包含された.

データ収集と解析:レビュアーは互いに独立にデータを抽出し,オッズ比(95%CI)あるいは平均差(95%CI)を推定した.脱落した患者は改善なしとみなした.

主な結果:GABA作動薬を使うことにより臨床上の改善の傾向しかみられず,このレビューの結論はあいまいである.しかし,臨床的に意味のある改善に限らずすべての改善について解析した場合,有意な減少があることが認められた(OR 0.36;CI 0.15-0.85).これはGABA作動薬で治療した患者のうち10人に1人は遅発性ジスキネジアの症状が軽くなることを示唆している.介入群の患者には錯乱(OR 7.4;CI 1.34-40.86)と鎮静(OR 3.0;CI 1.19-7.56)が見られた.この副作用をおこすのに必要なNNTはそれぞれ3,6であった.遅発性ジスキネジアの症状がさらに悪化したり(OR 1.72;CI 0.54-5.5),精神状態が悪化したり(OR 3.07;CI 0.78-12.05),臨床試験が終了する前に脱落する(OR 2.05;CI 0.8-5.21)傾向が,GABA作動薬を使う場合にみられた.

結論:GABA作動薬の有効性について明らかな言明はできない.データを統合すると,GABA作動薬は遅発性ジスキネジアをある程度改善させる傾向があったが,錯乱,鎮静,精神状態の悪化などの副作用とも関連がある傾向がみられた.


Citation: Soares KVS, McGrath JJ, Deeks JJ. GABA agonist medication for those with neuroleptic-induced tardive dyskinesia. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:糸目千穂/竹内 浩,古川壽亮)