食道静脈瘤の急性出血におけるソマトスタチンまたはオクトレオチドと,プラセボまたは無治療との比較

Somatostatin or octreotide vs placebo or no treatment in acute bleeding oesophageal varices

Gotzsche PC

最終更新日:23/04/1997


目的:ソマトスタチン又はオクトレオチドが,食道静脈瘤急性出血患者の生存を改善するか,輸血量を減少させるかを研究すること.

検索方法:MEDOLINEとコクラン・ライブラリーが,3か月毎に検索された.論文や著者の参考文献リストも検索された.

選択基準:食道静脈瘤の急性出血が疑われる患者において,ソマトスタチンまたはオクトレオチドを,プラセボまたは無治療と比較したすべてのランダム化試験.

データ収集と解析:抽出された結果変数:死亡率,輸血量,バルーンタンポナーデの数,初期止血回数,再出血回数 .Intension to treat解析が行われた.研究間で有意に不均一であった場合はランダム効果解析を用いることにした.

主な結果:メタ・アナリシスで820人の患者が含まれた.介入薬は生存に影響がなかった.すなわち介入群では91人が死亡したのに対し対照群では85人が死亡した(OR 1.04, 95%CI 0.74〜1.46).介入群で輸血数は少なく,介入群と対照群の差は,患者一人当たり1.2単位であった(95%CI 0.8〜1.6).バルーンタンポナーデの数(OR 0.59, 95%CI 0.21〜1.70),初期止血失敗患者数(OR 0.66, 95%CI 0.32〜1.37),再出血数(OR 0.73, 95%CI 0.30〜1.79)では有意差はなかった.しかし,試験の結果はこれらの二次的な変数に関して不均一であった事は気にとめておくべきである.


結論:効果は一患者につき輸血一単位減らすのに相当した.この効果は小さく,それ故,食静脈瘤急性出血にこれらの薬による治療を行う価値ははっきりしない.これは,今後の研究の必要性を示すものではない.一方,死亡率に与える効果において信頼区間の幅が広かった.したがって,死亡率に与える有効な効果が見過ごされている可能性を除外したいのであれば,大規模なプラセボ比較試験が必要である.


Citation: Gotzsche PC. Somatostatin or octreotide vs placebo or no treatment in acute bleeding oesophageal varices. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:益田裕子 /宮本英樹,大野茂樹)