下肢アテローム性動脈硬化症の治療におけるステロイド性ホルモン

Steroid sex hormones in the treatment of lower limb atherosclerosis

Price JF, Leng GC

最終更新日:13/06/1998


目的:下肢アテローム性動脈硬化症のステロイド性ホルモンの治療の効果と安全性を,症状の軽減,疾病の悪化の予防,全死亡率の減少という点から評価すること.

検索方法:コクラン末梢循環障害レビューグループによって記載された検索方法を用い,下肢アテローム性動脈硬化症に対するステロイド性ホルモンのランダム化比較試験をEMBASEとMEDLINEのコンピューターによる検索をし,関連雑誌もハンドサーチした.

選択基準:下肢アテローム性動脈硬化症に対するステロイド性ホルモン治療の全てのランダム化比較試験が含まれた.間歇性跛行,重症の下腿虚血,あるいは無症状の下肢アテローム性動脈硬化症に対し,ステロイド性ホルモン(エストロゲンまたはアンドロゲン)で治療した参加者の研究は選択基準を満たしていた.試験はJFPにより選択され,GCLによりチェックされた.

データ収集と解析:4つの試験が包含基準を満たしているようであった.しかし1つは方法に問題があり除外され,他の一つは英語への翻訳待ちである.残りの2つの試験は計83人の間欠性跛行を持つ男性に対しプラセボとテストステロンを比較した.評価方法として,自覚的な症状の改善や歩行距離の測定が含まれていた.評価方法として全死亡率と心血管系イベントはこれらの短い試験には含まれていなかった.データは査定者によって独立に抽出され,可能ならば試験の結果はメタ・アナリシスによる解析をうけた.

主な結果:テストステロン治療では,歩行距離テストや,末梢動脈疾患に対する種々の客観的テスト(静脈充満時間,筋血流および容積脈波を含む)に改善は生じなかった.結合した試験結果を用いた自覚的症状の改善に対するオッズ比は有意ではなかった(OR1.27,95%CI 0.48-3.33).

結論:短期間のテストステロン治療が男性の下肢アテローム性動脈硬化症に有効であるエビデンスはない.けれども,これは治療効果がないということよりもむしろ限られたデータのためにそうみえるのかもしれない.女性の下肢アテローム性動脈硬化症に対するエストロゲンホルモンの有益効果の可能性ついて調査した試験はなかった.


Citation: Price JF, Leng GC. Steroid sex hormones in the treatment of lower limb atherosclerosis. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:岡山雅信/濱崎圭三)