急性外傷性脳損傷後の予防的抗けいれん薬

Prophylactic anti-epileptic agents following acute traumatic brain injury

Schierhout G, Roberts I

最終更新日:26/06/1998


目的:急性外傷性脳損傷の管理の中での予防的抗けいれん薬の有効性と安全性を決定すること.

検索方法:検索手順は総括的にグループの手順によって行った.加えてMeSH subject headingとして"epilepy"や"post-traumatic"やワイルドカード文字を使ったfree-text termsの "(epileps* or convuls*) near (posttraum* or post-trauma* or inju*)" を使ったり,コクラン脳卒中グループやコクランてんかんグループのデータベースを検索した.私たちは抗けいれん薬を製造している製薬会社にも連絡をとり,それ以上の既発表あるいは未発表の研究を同定するために尋ね,また米国NIHのNational institute of Neurological Disorders and Stroke, Epilepsy Divisionにも連絡をとった.

選択基準:抗けいれん薬のすべての比較試験で,参加者は臨床的に定義された様々な重症度の急性外傷性脳損傷で,対象者はランダムもしくは準ランダム割付けに基づいて治療と対照(フラセボ対照群又は薬無使用群)に割付けられたもの.介入が受傷後8週以上たってから開始された試験は除外された.言語の拘束はない.

データ収集と解析:対象者,坑てんかん薬の使用とそのレジメ,追跡期間,早期発作(受傷後1週間以内の発作),晩期発作,非致死性の副作用(皮膚紅潮,神経動作の変化),神経学的能力障害,そして死亡についての情報を集めた.相対危険度と95%信頼区間はそれぞれの研究において薬剤使用前に除外するのも含んで,intention to treatにもとづき計算された.二値データについては,統計学的な不均一性が存在しない限り,相対危険度と95%信頼区間は固定効果モデルを使って計算した.不均一性の原因が明らかに割付けの隠蔽,薬のタイプや量に関係する場合は,そうした因子に関して解析は層別化した.

主な結果:2,036人の参加者を含む10の適切なランダム化比較試験を同定した.データは現在のところ4つの未発表な試験,631人の参加者に関しては利用できない.残りの研究では早期発作の予防に対する集積相対危険度は0.34(95%CI 0.21〜0.54)である.この評価をもとにすると治療を行った患者100人のうち10人が1週間以内の発作を防止できたことになる.急性期での発作のコントロールは死亡率の減少(相対危険度は1.15(95%CI 0.89〜1.51))や,死亡や神経学的能力障害の減少(カルバマゼピンで1.49 95%CI 1.06〜2.08,フェニトインで0.96 95%CI 0.72〜1.26),あるいは遅延性発作の減少(集積相対危険度1.28 95%CI 0.90〜1.81)は伴わなかった.発疹に対する集積相対危険度は1.57(95%CI 0.57〜39.88)であった.

結論:予防的抗けいれん薬は早期の発作を改善するには有効だが,遅延性発作の発生の減少や,死亡や神経学的能力障害への有効性のエビデンスはない.損傷後のどの時期でも行える予防的な治療の最終的な有効性を確立するには利用できるエビデンスが不十分である.


Citation: Schierhout G, Roberts I. Prophylactic anti-epileptic agents following acute traumatic brain injury. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:大野茂樹/鶴岡浩樹)