HIV感染者における結核の予防療法

Preventive therapy for tuberculosis in HIV infected persons

Wilkinson D

最終更新日:05/05/1998


目的:HIV感染者の病気や死亡を防ぐため,抗結核剤を用いる予防治療の有効性を評価する.

検索方法:HIVと結核でMEDLINEの検索,現在のコクラン比較臨床試験レジスター,この分野の研究者と連絡.

選択基準:活動期の結核の徴候のない,HIV感染者を対象とした,抗結核剤を用いるランダム化比較試験.

データ収集と解析:活動性結核,死亡,薬物副作用,HIVの進行,AIDSの発症.

主な結果:種々の単剤と複合剤での療法,6〜12ヶ月の連続療法を用いたハイチ,ケニヤ,アメリカ合衆国,ウガンダからの,5つの研究が選択基準に合致した.

4つの研究はプラセボコントロールであった.そして対照グループと比較した処置グループにおける活動性結核の出現のオッズ比は0.52(95%信頼区間[CI] 0.36〜0.76).結核の発生率はツベルクリン皮内テスト陽性者で減少した(OR 0.24,95%CI 0.13〜0.42),しかし皮内テスト陰性者には有意な低下はみられなかった(OR 0.82, 95%CI 0.48〜1.38).

皮内テスト陽性者において,それぞれの試験された療法は,1つの試験を除いて(ケニアにおける,毎日300mg6ヶ月間のイソニアジド投与)活動性結核に効果があった.様々な試験において,比較されたその予防の程度はよく似ていた(イソニアジドのみ:OR 0.37,イソニアジド+リファンピシン:0.36,イソニアジド+リファンピシン+ピラジナミド:0.48).

結論:予防治療は,HIV感染者にとって,活動性結核の発生率を低下させることに関してはかなり有益なようだ.予防治療は,ツベルクリン皮内テスト陽性者に明らかな効果があり,結核による死亡頻度をも有意に減少させる.薬の副作用はまれであり,一般的に重篤ではない.この処置から,ツベルクリン皮内テスト陰性者に関する有益な情報は得られていない.この処置の有益性を十分に評価する前に,ツベルクリン皮内テスト陰性者の為のさらに進んだ試行,特に長期にわたる予防治療の試行が必要である.現在,十分な効果もないのに,HIVの罹患率の高い地域に,予防的にイソニアジドを広範囲に投与するのが正しいとされているが,ツベルクリン皮内テスト陽性のHIV感染者の集団に限定するべきである.ツベルクリン皮内テスト陽性患者を含めたプラセボ比較試験については,この上検討することもないであろう.


Citation: Wilkinson D. Preventive therapy for tuberculosis in HIV infected persons. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:溝渕泰三/岡山雅信)