帝王切開術における腹膜開放術式

Peritoneal non-closure at Caesarean section

Wilkinson CS, Enkin MW

最終更新日:17/09/1997


目的:第一の目的は,帝王切開術の腹膜閉鎖術式のかわりに腹膜開放術式が術中と術直後の経過に影響を及ぼすかをみることである.第二の目的は,臓側腹膜と壁側腹膜の両方とも縫合しないか,どちらか1つを縫合しない場合にどのような影響があるかをみることである.

検索方法:コクラン妊娠と出産グループにより維持・更新された臨床試験のレジスター.

選択基準:すべての出版,未出版,現在進行中の試験で以下の基準を満たすもの 対象:選択的または緊急帝王切開術を行った妊婦.方法:帝王切開術で臓側と壁側腹膜またはどちらか一方を縫合しない方法と腹膜閉鎖術式とを比較する.結果判定(いずれか):手術時間(分),鎮痛の必要性(鎮痛剤投与量),術後の発熱,子宮内膜炎,術後の入院期間,創感染.

データ収集と解析:データは著者によってそれぞれの試験から不公平さを排除する方法を取らないで抽出された.各試験は腹膜の一方か,または両方の層が無縫合のまま残されたかどうか調べられた.次に臓側または壁側腹膜どちらかを縫合したかったものをサブグループとして解析し,最後に臓側および壁側腹膜を縫合しなかったものを解析した.

主な結果:腹膜開放術式は手術時間を4ー8分短縮したが,術後の合併症,鎮痛の必要性,入院期間については有意差はなかった.実際,有意差はないものの,腹膜を縫合しない場合に術直後の経過に改善がみられている.この合併症に関する差異はわずかだが,帝王切開術はかなり一般的に行われていることから,罹病率のわずかな改善は全体にとっても,経費削減にも意義があるだろう.

結論:これまでに得られた根拠から,通常の帝王切開術で行われる従来の方法として腹膜閉鎖術式をルーチンに行うことには疑問がでてくる.術直後の罹病率には帝王切開術の腹膜開放術式でも違いがないようである.


Citation: Wilkinson CS, Enkin MW. Peritoneal non-closure at Caesarean section. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:八重ゆかり/佐藤孝道)