頸動脈内膜剥離術における一次縫合と比較したパッチ血管形成術

Patch angioplasty compared to primary closure in carotid endarterectomy

Counsell C, Salinas R, Warlow C, Naylor R

最終更新日:17/05/1996


目的:ルーチンまたは選択的頸動脈パッチ血管形成術が,一次縫合を伴った頸動脈内膜剥離術と比較して,より有効かつ同程度の安全性があるかどうかを判断する.

検索方法:コクラン脳卒中レビューグループの検索方法,外科系雑誌のハンドサーチとより詳細ないくつかのデータベースの電子検索.

選択基準:臨床的なアウトカムの詳細が入手可能な,頸動脈パッチ血管形成術と一時縫合を比較した,完了したランダム化比較試験.8つのランダム化試験が確認され,そのうちの2つが除外された:1つは患者の30%でアウトカムが報告されていなかった.もうひとつは,実はランダム化されていなかった.試験の質は一般的に低かった.

データ収集と解析:次のアウトカムが術中期間(術後30日以内)及び全経過観察期間中に評価された.何らかの脳卒中,同側性脳卒中,死亡,手術をした動脈の閉塞または再狭窄(>50%),出血,感染症,脳神経麻痺,偽動脈瘤形成のような重大な動脈の合併症.

主な結果:6つの試験(794患者,882手術)でルーチンの頸動脈パッチ血管形成術と一時縫合が比較されていた.ルーチンのパッチ使用は,術中期間及び長期経過観察期間中の何らかのタイプの脳卒中,同側性脳卒中,脳卒中または死亡のリスク減少の見込みにも関連していた.しかし,これらの分析は少ないアウトカムの結果に基づいていたり,経過観察の重大な欠除があったりした為に,信頼できるものではないだろう.頸動脈パッチ血管形成術は術中の動脈閉塞(オッズ比 0.17, 95%信頼区間 0.06-0.46)と,長期経過観察期間中の再狭窄のリスク(オッズ比 0.32, 95%信頼区間 0.19-0.53)を有意に減少するが,しかしこれらの結果も同様に,相対的に数が少なく,経過観察の欠除の為に正確なものではないだろう.パッチまたは一次縫合の何れのグループにおいても,動脈性の合併症(出血,感染症,脳神経麻痺,偽動脈瘤形成)は非常に少なかった.

結論:頸動脈パッチ血管形成術は,術中動脈閉塞と経過観察期間中の再閉塞のリスク減少に関連しているであろう.しかしながら,これらのリスク減少が死亡または脳卒中のリスク減少の面から,患者に対する臨床的な利益と関連しているかどうかは明確ではない.


Citation: Counsell C, Salinas R, Warlow C, Naylor R. Patch angioplasty compared to primary closure in carotid endarterectomy. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:福井直仁/濱崎圭三,中村英治)