満期または満期近くの前期破水に対するプロスタグランジンとオキシトシンの比較

Prostaglandins versus oxytocin for prelabour rupture of membranes at or near term

Hannah ME, Tan BP

最終更新日:28/8/1996


目的:満期または満期近く(34週以降)でのオキシトシンを用いた陣痛誘発と比較して,プロスタグランジンを用いた陣痛誘発が母体および新生児の罹病率におよぼす影響を判定すること.

検索方法:コクラン妊娠と出産グループによって開発された検索方法に従って,前期破水(PROM)でのオキシトシンを用いた陣痛誘発とプロスタグランジンを用いた陣痛誘発を比較したランダム化または準ランダム化試験につき,世界の文献からレビューした.

選択基準:自然破水した妊婦,分娩開始前,妊娠34週以降の妊婦を含む研究はすべて含めた.

データ収集と解析:試験は質について評価し,データを抽出した.それぞれの結果測定について典型的なオッズ比と95%信頼区間を計算した.ランダム化の過程が完全と考えられる試験については初産婦と経産婦でサブグループの分析を行った.

主な結果:21研究がレビューされ,5研究は除外された.1研究はランダム化の時点での週数の記載がなく,4研究は使用できる結果測定がなかった.17研究が分析に用いられた.すべての研究を分析に含めると,オキシトシンに対してプロスタグランジンでの陣痛誘発で有意に増加するのは絨毛膜羊膜炎(6研究),8回を越える内診(1研究),母体の悪心または嘔吐(6研究),24時間を越えるNICUへの入院(1研究),新生児への抗生物質投与(1研究)であった.有意に減少した結果は内側法(1研究),硬膜外麻酔(8研究).帝王切開,子宮内膜炎,新生児死亡率については有意差はなかった.

結論:プロスタグランジンによる陣痛誘発は,オキシトシンによる陣痛誘発に比べて,母体の感染症(絨毛膜羊膜炎)のリスク,母体の副作用(嘔気かつ/または嘔吐),母体への介入(8回をこえる頻回の内診)を増加させ,また新生児の感染症のリスクも増大させるかもしれない.Hannahの研究以外では,割りつけ群と破水後の時間に関する盲検化を行わずに新生児感染の検索と診断がなされており,プロスタグランジンによる陣痛誘発が新生児感染に及ぼす悪影響はこのメタアナリシスで示唆されたより小さいかもしれない.プロスタグランジンによる陣痛誘発は,新生児の抗菌療法の頻度と新生児集中治療室への入院を増加させる.質の高い研究では,プロスタグランジンによる陣痛誘発の方針は,硬膜外麻酔や内側法の使用の減少と関連があるが,帝王切開率を増加させるあるいは減少させるという証拠はない.これらのデータは,オキシトシンによる陣痛誘発と待期的管理との比較の概説やプロスタグランジンによる陣痛誘発と待期的管理との比較の概説に一致している.


Citation: Hannah ME, Tan BP. Prostaglandins versus oxytocin for prelabour rupture of membranes at or near term. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:六車浩史/佐藤孝道)