子宮内膜症治療における排卵抑制とプラセボの比較

子宮内膜症治療における排卵抑制とプラセボの比較

Ovulation Suppression vs Placebo in the Treatment of Endometriosis

Hughes E, Fedorkow D, Collins J, Vandekerckhove P

最終更新日:15/02/1996


目的:子宮内膜症が原因である不妊症治療において,臨床的妊娠率を指標にして,a)ダナゾール,酢酸メドロキシプロゲステロン,ゲストリノン,混合型経口避妊薬あるいはGnRHアナログによる排卵抑制治療と,プラセボおよび無治療,とを比較したとき,b)上記薬剤とダナゾールを比較したとき,の有効性について検討した.

検索方法:このレビューはコクラン生殖能力低下グループにより開発された検索方法により抽出された.適切な論文は同グループの比較臨床試験特別レジスターで判定された.より情報がほしい場合はレビューグループの詳細をみてください.

選択基準:排卵を抑制する薬剤を使用した5つの治療方法と,プラセボまたは無治療とを比較した4つのランダム化比較試験.それとダナゾールとその他の薬剤を比較した8試験が選ばれた.

データ収集と解析:データの抽出:1966年から現在までの43の主要な雑誌のハンドサーチ,関連した研究の著書目録,MEDLINE,北米や欧州の学会要旨集,関連論文の著者へ連絡,を含む様々な方法がとられた.関連したデータは,標準化した抽出用紙を用いて,2人の判定者によってそれぞれ別々に抽出された.妥当かどうかは,ランダム化の方法,フォローアップの完全性,併用や交差試験の有無の観点から評価された. データの統合:すべての関係する結果には,2×2表を作成した.オッズ比は,ピート法の変法であるマンテル・ヘンツェル法を採用した.統計学的検定は,カイ2乗検定を採用した.

主な結果:排卵抑制剤を使用した群の,プラセボまたは無治療群に対する妊娠のオッズ比は0.83(95%CI 0.5-1.39)だった.この結果は統計的に同一であったが,臨床的な相違はあった.治療を行う有益性が一致してなかったことは,治療が有効でないことを示すものであろう.すべての薬剤対ダナゾールの妊娠のオッズ比は1.20(95%CI 0.85-1.68)だった.これらのデータもまた有意差はなく,妊娠率という観点からは有効な薬剤がないことを示している.

結論:排卵抑制による無月経の期間が問題なのか,無治療の方が結果がよく,また一般的にこれらの治療には妊娠に反する作用が伴うので,排卵抑制は,内膜症が関係する不妊症に対する標準的な治療としては勧められない.


Citation: Hughes E, Fedorkow D, Collins J, Vandekerckhove P. Ovulation Suppression vs Placebo in the Treatment of Endometriosis. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:日野村 靖/佐藤孝道)