目的:不妊の原因が特発性乏精子症かつ/または精子無力症と考えられるカップルにおいて,男性を抗エストロゲン薬で治療することにより妊娠率が増加するかどうかを判定すること.精液所見と性ホルモンに対する治療の影響も第二義的に検討した.検索方法:グループの比較臨床試験特別レジスター(「レビューグループの詳細」を参照).
選択基準:ランダム化比較試験に限る.妊孕性の低下した男性に対して抗エストロゲン薬(クエン酸クロミフェンまたはタモキシフェン)を治療的に用いた19のランダム化比較試験が確認され,うち10が本レビューに含まれた.
データ収集と解析:1. 各試験の実施方法の特徴.2. 試験対象患者の基本的特徴.3. 結果:妊娠率,精液所見(精液濃度,運動率,形態),内分泌(血清FSH・テストステロン・エストラジオール).
主な結果:抗エストロゲン薬の妊娠率に対する効果は有益であり(合計したOR 1.56),有意水準5%ではもう少しで有意であった(CI 0.99〜2.40).しかしランダム化の確実な試験ではその有益性はより小さかった(OR 1.26.CI 0.72〜2.19).ホルモン値に対する効果は明らかだが,精液パラメータに及ぼす影響は非常に小さかった.
結論:本レビューでは有効性の根拠は得られなかった.しかし,抗エストロゲン薬は乏精子症,精子無力症に対してわずかな(しかし価値のある)有効性をもつようである.
Citation: Vandekerckhove P, Lilford R, Vail A, Hughes E. The medical treatment of idiopathic oligo- and/or asthenospermia: anti-oestrogens (clomiphene or tamoxifen) versus placebo or no treatment. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.
(日本語翻訳:日野村 靖/佐藤孝道)