禁煙に対するニコチン置換療法

Nicotine replacement therapy for smoking cessation

Silagy C, Mant D, Fowler G, Lancaster T

最終更新日:21/05/1998


目的:ニコチン置換療法 (NRT) は,禁煙する人々を手助けする薬理学的作用薬としてもっとも広く使用されている.NRTの目的は,タバコからニコチンに置換し,そのため,禁煙に関係する離脱症状を減らし,タバコを吸いたいという気持ちに喫煙者が対抗する助けるのである.このレビューの目的は,異なる剤形のニコチン置換療法 (チューイングガム,経皮貼付薬,鼻腔スプレー,吸入薬) の,タバコをやめる点での効果を調べる.その効果が,喫煙者が勧誘され治療を受ける臨床設定,使用するNRTの投与量と剤形,あるいは喫煙者に提供される補足的な助言とサポートの強さによって,影響を受けるのかどうかを調べる.また一つのタイプのNRTよりも組み合わせのほうがより効果的かどうかを調べる.

検索方法:コクランタバコ嗜癖グループの検索方法を用い,NRTのランダム化比較試験を確認した.

選択基準:ランダム化比較試験で,NRTをプラセボ又は治療なしと比較しているか,NRTの異なる投与量を比較したものを選択した.禁煙率を報告していない試験,調査期間が6カ月未満のものは除外した.

データ収集と解析:2人の著者が独立してデータを抽出した.主要評価項目は6-12カ月後の禁煙であり,固定効果モデルを用いてメタ・アナリシスを行った.

主な結果:我々はニコチンガムの49研究,経皮的ニコチンパッチの24研究,鼻腔内ニコチンスプレーの4研究,およびニコチン吸入薬の4研究を確認した.3研究は,2剤形併用を1剤単独と比較していた.

対照と比較しNRTによる禁煙のオッズ比は1.73(95%信頼区間1.60-1.86),剤形の違いによるオッズ比は,ガムは1.63,貼付薬は1.84,鼻腔内スプレーは2.27,吸入ニコチンは2.08であった.これらのオッズ比は,提供された不可的なサポートの強さやNRTが行われた設定とはほとんど独立していた.

結論:NRTはヘビースモーカーに対する禁煙対策の効果的な要素の一つである.ルーチンに提供すべきである.NRTの剤形選択は個人の環境による.発売されているすべてのNRT(ニコチンガム,経皮パッチ,またある国ではニコチン鼻腔スプレー,ニコチン吸入薬) は禁煙を促進する対策の一部として効果的である.それらは設定に関わらず,おおよそ1.5から2.0倍中止率を増加する.NRTの使用は,やめたいという動機があり(援助を彼から求めてくることで示される),高度のニコチン依存のある喫煙者に選択的に向けるべきである.1日に10から15本より少ないタバコを吸っている個々に対するNRTの役割はほとんど証拠がない.

どれを使用するかの選択は,患者の要求,忍耐性,およびコストへの考慮を反映すべきである.パッチは,ガムや鼻腔スプレーよりもプライマリ・ケアにより使用しやすそうである.8週間のパッチ療法は,長期間と同じくらい効果的であり,漸減療法は,突然の休薬より良いという証明はない.起きている間だけ(16時間/日)パッチを貼っているのは,24時間/日貼っているのと同じ効果である.

もしガムを使用するならば,固定量で,あるいは好きな時に使うことができる.高い依存性の喫煙者,あるいは,2mgのガムで失敗したことのある人は,4mgのガムを提供すべきである.

喫煙者に与える付加的補助の強さは,NRTの効果とは全く独立しているようである.これまで報告されたNRTの全ての試験は,少なくとも喫煙者に簡単なアドバイスを含んでいるので,治療の効果を確実にするためには最低限必要なことを示している.より濃厚なレベルの援助の提供は,やめる可能性を促進するには有益であっても,NRTの成功に必須ではない.


Citation: Silagy C, Mant D, Fowler G, Lancaster T. Nicotine replacement therapy for smoking cessation. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:水谷武夫/浅井泰博)