変形性関節症: 変形性膝関節症の治療を目的とする非アスピリン非ステロイド性抗炎症剤の有効性の比較

OSTEOARTHRITIS: The Comparative Efficacy of Non-Aspirin Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs for the Management of Osteoarthritis of the Knee

Watson MC, Brookes ST, Kirwan JR, Faulkner A.

最終更新日:27/11/1996


目的:変形性膝関節症の治療に使用されている,非ステロイド性抗炎症剤の相対的効果の違いがあるかどうかを決定する.

検索方法:MEDLINE Ovid(for Windows Version 3.0)とBIDS EMBASE の二つのデータベースを用いて,システマティックな検索が行われた.検索は英語で出版されたものに限られ,最後に行われたのは1996年11月であった.修正されたコクラン共同計画検索法を用いてMEDLINEにあるすべてのランダム化比較試験を選び出した.このレビューからは除外したい単盲試験が検索結果に含まれるため検索方法の修正が必要とされた."random allocation","double-blind method","clinical trials"などを含めたいくつかの検索を"explode"を用いて行った.MeSH検索語"aosteoarthritisa" は一般診療で変形性関節症の治療として英国でみとめられている17の非アスピリンNSAIDsの一般名を合わせたものであった.これらの用語がタイトル,抄録または見だし語(sub-heading)の中にあるか否かを検索した.MEDLINEは1995年1月から1996年12月まで検索した.EMBASEは変形性関節症という用語を用いて抄録,タイトルやキーワードにあれば選び出し,また17の非アスピリンNSAIDsの一般名はそれらが抄録,タイトルやキーワードにあるときだけを選び出しそれらを合わせた.1980年の1月から1995年の12月までの EMBASEの検索を行った.

選択基準:変形性膝関節症の治療で2つの非アスピリンNSAIDsの効果を比較している英語で書かれたすべての双盲の,ランダム化比較試験が選択された.16歳以上の被験者による試験だけで,臨床的かつ/または放射線学的に変形性膝関節症の診断が確認されたものが含まれた.一つの試験NSAIDと一つの対照NSAIDを比較した試験が含まれ,それらの薬物の基準はは英国で入手可能で,開業医が行う変形性関節症の治療に認可された非アスピリンNSAIDsとして提供されているものとした.プラセボ対照と二つのNSAIDsの比較に関係する試験が含まれた.

データ収集と解析:それぞれの試験のデザインは前もって決められた方法に従ってスコア化した.3つの主たるアウトカムである疼痛,身体機能,患者総括的評価を,それぞれの試験の評価してして用いた.NSAID用量は推奨されている最大1日投与量のパーセンテージを用いて計算した.膝変形性関節炎の評価のために用いられるアウトカムを評価する際に臨床的に意味のある変化を検出するために必要な標本数はあらかじめ計算し作表し推定した.膝,臀部,手の変形性関節症の第3相試験において用いられるアウトカム測定の核心部分の設定は,最近同意されたリウマチ学的臨床試験のアウトカム測定(OMERACT)によって確認された.これらで測定されているものの中に,疼痛,身体的機能,患者総括的評価といった妥当性の高い測定項目が含まれており,従って,このレビューにおいてもこれらの項目は評価項目に含んだ.このレビューに採用した論文においてそれらのアウトカムの評価を詳細に調査され,これらの評価項目を含んだ項目に対して,その検出力の計算は可能な限り行われた.これらの計算の目的は,試験が統計学的に有意な臨床的意味のある差を検出するのに十分な大きさを持つかどうかを判定することにある.これらの計算は試験データに基づき,さらには一連の観察者非独立アウトカムと観察者独立アウトカムの両方に対する二つの異なったNSAIDsの平均値の比較に対する標本数の推定にも基づいている.計算には,臨床的に重要と思われた二つの医薬品間の標準偏差,最小値,中央値,差の最大値(delta)の推定が組み込まれている.「有効性を欠落させる脱落」の数は,このレビューのアウトカムの計算時にやはり採用されている.ピートのオッズ比(OR)と95%信頼区間は可能な限り計算した.同じ試験NSAIDsと対照NSAIDsを比較している研究結果は,可能な場合はメタ・アナリシスを目的として併合した.

主な結果:検索によって引き出された1151件の論文中,22論文が変形性膝関節症だけに関係していた.これらの試験のうち16論文が採用基準を満たしており,レビューに組みいれた.これらの試験の中で8つのNSAIDsが言及されていた.エトドラクは11試験で言及されていた.これらの試験での対照NSAIDは,ピロキシカム(n=3),ナプロキセン(n=3),ジクロフェナク(n=3),インドメタシン(n=1),ナブメトン(n=1)であった.報告されているデザインは貧弱で,中央値は3(最大は8)であった.「有効性を欠落させる脱落」のアウトカムは,可能な場合それぞれの試験のピートのオッズ比の計算を用いられた.同じ試験NSAIDsと対照NSAIDsを比較している試験の結果は,「有効性を欠落させる脱落」のアウトカムのためにプールされた.エトドラクとピロキシカムの比較において,オッズ比がエトドラクを支持,すなわちエトドラクを投与されている患者は「有効性を欠落させる脱落」が少ないだろうということが支持された.これらの3つのどの研究でも用いられたエトドラクの投与量は,しかしながらピロキシカムに相当する投与量(最大1日用量のパーセンテージの基づく)よりも多かった.これらの結果の有意性は,それ故疑わしい.エトドラクとジクロフェナク,エトドラクとナプロキセンの比較において,治療上明確な差はない.1つの研究[Bellamy 1993]において,「有効性を欠落させるに十分な脱落」とみなされる統計学的有意差が検出された.同等なNSAID投与量を比較しているこの試験では,テンクソシアムと比較してジクロフェナクが支持されるNSAIDであった(p=0.04).2つの試験が健康状態の患者総括的評価について統計学的な差を示し,試験NSAIDを支持するものであった.どちらのケースも試験NSAIDはエトドラクで,対照NSAIDよりもおおよそ25〜44%多い投与量が用いられていた.2つの試験は,NSAIDs間の疼痛軽減において統計学的有意差を示した.両者の試験NSAIDはやはりエトドラクで,しかし,対照NSAIDの投与量を越えていた.

結論:この領域での多くの出版数にもかかわらず,ランダム化比較試験(RCTs)は少ししかない.さらに,2つまたはより多くのNSAIDsを比較しているほとんどのRCTsが,実質的デザインエラーを被っている.このレビューの結果より,有効性とNSAIDsの同等の推奨投与量間を区別することに関する入手可能な実質的エビデンスはないと結論される.

比較薬の適切な量を使った試験では,ほとんどのものが臨床的に意味のある有効な差を検出するのに十分にあったと思われる.相対的な安全性,患者認容性,コストに基づくべき変形性膝関節症に対する処方としてのNSAIDの選択が,NSAIDs間の有効性の差として記載されていなかった.


Citation: Watson MC, Brookes ST, Kirwan JR, Faulkner A.. OSTEOARTHRITIS: The Comparative Efficacy of Non-Aspirin Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs for the Management of Osteoarthritis of the Knee. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:横田恭子/石川鎮清,岡山雅信)