マラリアに免疫のない成人における予防を目的としたメフロキノン

Mefloquine to prevent malaria in non-immune adults

Croft AMJ, Garner P

最終更新日:12/11/1997


目的:メフロキノンによる予防の効果や耐用性に関する研究証拠を評価すること.

検索方法:コクラン感染症グループに登録されているあらゆる関連する比較試験,MEDLINE,EMBASE,LILACS,そして科学引用索引の体系的な検索,引用文を細かく調べること,製薬会社や手がかりとなる研究者の意見を聞くこと.私たちはすべての言語で研究を探した.

選択基準:試験はマラリアに免疫性のない成人旅行者,旅行をしていないボランティアを対象にして,プラセボ又は他の標準予防法を対照にしたメフロキノンのランダム化比較試験.

データ収集と解析:データは各研究の出版された文献から引き出された.そして大きく2つのカテゴリーに分けて解析された.有効性についての1次と2次の証拠(塗抹で明確なマラリアの疾病,そして最近のPlamdium伝染の抗体マーカーを後ろ向きに測定),そして一般的な耐用性についての一次と二次の証拠(試験の治療内容でのコンプライアンス不良や治療中断,そして報告された症状,マラリア以外の死亡又入院).それに加え出版されていないデータは研究者から直接探した.

主な結果:メフロキノンによる予防治療の37の試験は同定し,そのうち10は含有基準に合った.これらの10の試験は,メフロキノン又はコントロール群にランダム化された合計2750人のマラリアに免疫なしの成人の参加者であった.1つのプラセボ対照比較試験は直接マラリア発病率を調べ,メフロキノンが薬物耐性の地域でマラリアを防ぐことに高い効果を示した.しかし、4つのプラセボ対照比較試験では,メフロキノン治療の耐用性はよくなく,プラセボ群よりメフロキノン治療群で一貫して治療脱落が高かった(OR 3.49,95%CI 1.42〜8.56).5つのフィールド試験は,メフロキノンを他の化学療法と比較した.メフロキノンは他の化学療法より耐用性は悪くなかった.しかしながらメフロキノン治療群で高い治療中断の傾向の可能性(OR 1.33,95%CI 0.75〜2.36)が見られた.

結論:1つの試験ではメフロキノンでのマラリア予防に効果があった.だが治療中断率,おそらく副作用によるものと推定されるが,これらは多くの試験を通して高かった.これは一般旅行者でメフロキノンの有効性を損ないそうである.従ってルーチンの予防法として有益でないかもしれない.メフロキノンはクロロキン抵抗性マラリアの高い危険性のある地域や有効な医療機関へアクセスが限られている地域に旅行するグループのような特定の状況で使う場合には有益かもしれない.一般の旅行者の不均一な集団の中でのメフロキノン化学療法の耐用性を評価するフィールド試験が少なくとも一つ必要である.蚊が刺すのから避けることについて測定したものや旅行前に健康に関するアドバイスの遵守を向上させる戦略に関するシステマティック・レビューが必要である.国際的なレベルで,適切な多くの学問領域からなる助言パネルを通してマラリア予防に関する,妥当な,科学的証拠に基づくガイドラインを作成する必要がある.


Citation: Croft AMJ, Garner P. Mefloquine to prevent malaria in non-immune adults. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:矢野利枝 /吉村 学,村上智彦)