子供がアトピーとなる危険が高い女性の妊娠時の抗原摂取回避

Maternal antigen avoidance in pregnancy in women at high risk for atopic offspring

Kramer MS

最終更新日:14/08/1996


目的:妊娠中の抗原回避食が妊婦の栄養状態や子供のアトピー発症に対して与える影響を評価すること.本人・夫または前児がアトピーの病歴をもつ場合をもとに,アトピーの子供を出産する危険が高い妊婦を主な対象とした.

検索方法:コクラン妊娠と出産グループにより維持・更新された臨床試験のレジスター.

選択基準:抗原回避の程度(食事から除外された食品数)や妊娠のいつの段階から始めたかは問わずにアトピーの子供を出産する危険が高い妊婦に対して抗原回避食を投与し,比較検討を適切に行った全研究を対象とした.母体からの抗原暴露の影響を除くために授乳期まで人工乳(つまり非母乳)を与えられた児についてのデータも研究には含められる.

データ収集と解析:データは出版された報告より著者が抽出し,また著者が研究者に連絡を取って追加情報がデータに補足された.

主な結果:1987年のFalth Magnussonの適切なデータをもとにすれば,制限食は少ないながらも統計的に有意差をもって妊娠中の平均体重増加を減少させ(平均差は非妊娠時体重の-3%),早産のリスクには有意差はなかったが高くなった.各種データからみると母体の抗原回避食により生後12-18ヶ月後のアトピー性湿疹や喘息の頻度を強く抑制する効果はなかった.アレルギー性鼻炎・結膜炎と蕁麻疹についてのデータはそれぞれ1つずつからの研究結果にとどまっており,有効と結論されない.2つの研究では生後6ヶ月後の卵に対するプリックテスト陽性頻度が低下したと報告しているが,18ヶ月後には差がなく,またミルクに対するプリックテストに対してはどの年齢においても効果は認めなかった.どちらかといえば,臍帯血中のIgEは研究群(抗原回避群)でより高値であった.

結論:アトピーの子供を産む危険が高い女性に対して妊娠中に抗原回避食を投与することは子供がアトピーとなる危険を実質的に低下させることはなさそうである.さらにいえば,そのような制限食は母児の一方または双方に対して悪影響を与える可能性がある.


Citation: Kramer MS. Maternal antigen avoidance in pregnancy in women at high risk for atopic offspring. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:久住真喜子/佐藤孝道)