局所麻酔下で行う頸動脈内膜剥離術と全身麻酔下での比較

Carotid endarterectomy performed under local anaesthetic compared to general anaesthetic

Tangkanakul C, Counsell C, Warlow C

最終更新日:02/08/1996


目的:局所麻酔下で行う頸動脈内膜剥離術によって,術中の脳卒中や死亡の危険性が,全身麻酔下の手術に対して減少するか否かを決定する.

検索方法:関連するランダム化試験をコクラン脳卒中グループのデータベースを用いて検索し,さらにランダム化を行っていない試験についてもMEDLINE (1966-1995)やEMBASE (1980-1995) を用いて詳細に検索した.

選択基準:局所または全身麻酔下の手術を比較したランダム化試験とランダム化を行っていない試験を,二人の著者が独自に選んだ.

データ収集と解析:以下のデータは二人の著者が独自に抽出を行った.患者選択の詳細,患者の特性,包括または除外の基準,手術や手術手技の適応.以下のアウトカムは手術の30日後に記録された.死亡,脳卒中,心筋梗塞(MI),その他の手術合併症(局所の出血,肺合併症,脳神経麻痺).ピートの方法を用いてメタ・アナリシスを行った.

主な結果:非ランダム化試験が17例(患者数は約5970名),ランダム化試験は3例(患者数は143名)のみであった.割付を行っていない試験によって,局所麻酔を用いると術中の脳卒中,死亡,心筋梗塞や肺合併症の著しい減少(40%ー60%)につながることが示された.また,局所麻酔群では病院滞在期間も短縮されことも示された.ランダム化試験のデータがあまりに少なく,これらの知見の真偽を証明することはできない.というのは,割付けられた143名のうち1人が死亡し,7名の脳卒中が報告されたに過ぎないからである.患者の満足度など重要なアウトカム評価は行われなかった.

結論:非ランダム化試験によって,頸動脈内膜剥離術を局所麻酔下で行うことが有益である可能性が示された.しかしこれらの試験には重大な欠陥があり,あくまで仮説が立てられたとのみ考えるべきである.局所麻酔のルーチンな使用を勧める前に,適切にデザインされた大規模なランダム化試験において今回の知見を実証しなければならない.


Citation: Tangkanakul C, Counsell C, Warlow C. Carotid endarterectomy performed under local anaesthetic compared to general anaesthetic. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:秋山香乃/和座一弘,河合 徹)