下肢アテローム性動脈硬化症の治療としての血清脂質降下療法

Lipid-lowering therapy in lower limb atherosclerosis

Leng GC, Price JF, Jepson RG

最終更新日:14/08/1998


目的:下肢アテローム性動脈硬化症を持つ患者の血清脂質降下療法が,症状の軽減,基礎疾患の悪化の防止,死亡率の減少の点で,安全で有効的かどうかを決定する.

検索方法:下肢アテローム性動脈硬化症の治療における血清脂質降下療法のランダム化比較試験が,コクラン末梢循環障害レビューグループによって記載された検索方法を用いて探された.方法は,関連医学雑誌のハンドサーチ,そして徹底したMEDLINE検索を含んでいる.加えて,血清脂質降下の論文の参考文献,主な研究者や製薬会社との直接接触,EMBASE検索によって論文を見つけた.

選択基準:血清脂質降下療法群対対照群の全ての試験が含まれた.跛行,重症の四肢の虚血,無症候性疾患の患者を扱った試験は含まれたが,大動脈疾患あるいはバイパス術後の患者を扱った試験は含まれなかった.食事療法や高脂血症の治療に特異的に用いられるどんな薬物を含め,血清脂質を減少する目的のどんな治療方法も含まれた.試験はGCLによって選択され,JFPにより確認された.

データ収集と解析:9つの試験が包含基準を満たし,2つは不十分な方法論のため除外された.包含した試験は計700人足らずの参加者を含み,7つの異なる国で行われた.結果の評価の多くは死亡率,非致死的イベント,血管造影上の変化,ABPI,歩行距離と副作用であった.レビュアーは独立してデータを抽出し,オッズ比と重み付き平均差を計算した.

主な結果:血清脂質降下療法により死亡率において著しいが有意でない減少があった(OR 0.21, 95%CI 0.03から1.17),しかし非致死的イベントではほとんど変化がなかった(OR 1.21,95%CI 0.80から1.83).2つの試験で,血管造影において疾病進行の有意な全般的減少があった(OR0.47,95%CI0.29から0.76).ABPIと歩行距離でみた治療効果は一貫していなかった.症状においては全般的な改善が見られたが,統計学的メタ・アナリシスでは違いがみられなかった.

結論:このレビューは,血清脂質降下療法は末梢動脈性疾患患者の死亡率を減少させ,潜在的なアテロームの進行を抑えることを示唆している.しかしそれらは比較的少数のイベント数に基づいているため,結果は注意して解釈されなければならない.治療が症状を改善するエビデンスもいくらかある.しかしながら包含した試験間の結果には相違がみられるため,結果を異なる患者群や治療方法にあてはめる前に注意しなければならない.これらの結果によってどの血清脂質降下療法が他のものより良いかどうかを決定することは出来ない.しかし,リポ蛋白に対する副作用のためにプロブコールは注意深く使用したほうがよいという幾つかのエビデンスがある.


Citation: Leng GC, Price JF, Jepson RG. Lipid-lowering therapy in lower limb atherosclerosis. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:今道英秋/鶴岡浩樹)