急性虚血性脳卒中における低分子量ヘパリンまたはヘパリン様物質と標準の非分画ヘパリンとの比較

Low-molecular-weight heparins or heparinoids compared to standard unfractionated heparin in acute ischaemic stroke

Counsell C, Sandercock P

最終更新日:20/07/1995


目的:急性虚血性脳卒中の患者に対して,低分子量ヘパリンまたはヘパリン様物質による治療が,標準の非分画ヘパリンによる治療よりも,より有効であり,同じくらい安全であるかどうかを決定する.

検索方法:コクラン脳卒中レビューグループ検索方法と,低分子量ヘパリンまたはヘパリン様物質を販売する会社との個人的な接触による.

選択基準:急性虚血性脳卒中において,ヘパリン様物質または低分子量ヘパリンの使用と標準の非分画ヘパリンの使用を比較している,制限を受けていない,真のランダム比較試験で,完了したものがすべて含まれた.

データ収集と解析:次のようなアウトカムが評価された.深部静脈血栓症,肺塞栓症,死亡(すべての原因と血管性のもの),頭蓋内出血,頭蓋外出血,再発性の脳卒中およびその後遺症で患者の能力障害のレベル.すべての分析は,可能な限り,”intention‐to‐treat解析”で行った.

主な結果:上記の包含基準を満たす4つの臨床試験が同定され,それらは皆,ヘパリン様物質(ダナパロイド)と標準の非分画ヘパリンとを比較したものであった.これらの試験には 493名の患者が含まれており,そのうちの 308名がダナパロイドに割り当てられ, 185名が標準の非分画ヘパリンに割り当てられた.ダナパロイドは明らかに静脈血栓症を有意に少なくすることに関連していた:治療群 41/308 (13.3%)対コントロール群 57/265 (21.5%)(オッズ比 0.52,95%信頼区間 0.31‐0.86,2p=0.014).肺塞栓症,死亡,頭蓋内および頭蓋外出血の割合においては有意な差は見られなかったが,イベントの起こった症例数があまりにも少ないので,リスクの正確な評価を示すことはできなかった.例えば,ダナパロイドによる治療は,標準のヘパリンによる治療よりも患者1,000人あたりの死亡が50人少ないあるいは 150人多いことに関連づけられるかもしれない.再発性の脳卒中やその後遺症のある患者での機能的アウトカムについての情報はなかった.

結論:急性虚血性脳卒中の患者において,標準の非分画ヘパリンに対してのヘパリン様物質の使用は,深部静脈血栓症を有意に減少させることに関連していた.しかし,あまりにも症例数が少ないために,他の重要なアウトカム,特に死亡や頭蓋内出血についての信頼性のある情報を示すことはできなかった.急性虚血性脳卒中の患者に対して,どんなタイプのヘパリンまたはヘパリン様物質を投与しても安全であるかどうかは明確でないので,急性虚血性脳卒中の患者に対するダナパロイドの日常的な投与は現在では推奨できない.


Citation: Counsell C, Sandercock P. Low-molecular-weight heparins or heparinoids compared to standard unfractionated heparin in acute ischaemic stroke. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:六車浩史/三瀬順一,中村英治)