妊娠中にルーチンで行う鉄分補充

Routine iron supplementation during pregnancy

Mahomed K

最終更新日:27/04/1998


目的:ルーチンで行う鉄分補充の,あらかじめ決められた血液学的,生化学的パラメータに対する,そして妊娠の結果の母体と胎児の評価項目に対する効果を評価する.

検索方法:コクラン妊娠と出産グループによって開発された検索方法を用いている.

選択基準:適格とされるのは,妊婦に対するルーチンで行う鉄分補充の役割を評価した全ての容認できる比較試験.ルーチンで鉄分補給を行うのとヘモグロビン濃度が10g/dl以下になった時にのみ選択的に鉄分補充を行うのを比較している研究が1つだけあった[Finland 1991].

データ収集と解析:出版された試験のデータが使われている.主な著者たちには,明確にすべき点がある場合は連絡をとった.

主な結果:ルーチンで行う鉄分補充は,血清フェリチン値を10μg/l以上に上昇または維持させ,妊娠後期におけるヘモグロビン値が10または10.5g/dl以下の女性の割合を実際に減少させた.しかし,ルーチンに補充することに,母体または胎児にとっての実質的な効果はなんら見いだされなかった.ルーチンに行うのと選択的に補充するのを比べた1つの試験[Finland 1991]では,帝王切開と分娩後の輸血の可能性の減少が見られ,しかし,ルーチンに補充したグループが,より死産が多かった.しかし,ただ1つの結果は,慎重に解釈すべきだ.

結論:入手可能な比較試験のデータは,ルーチンの鉄分補充が分娩時や分娩後6週間の低ヘモグロビンを防ぐために効果的であることを明らかに立証している.母親と新生児両方にとって,妊娠の結果に対して有益か有害か,測定可能な影響に関する情報はほとんどない.それゆえ,妊娠期に鉄分補充をルーチンで行う方策を勧めるかもしくは反対するかの強力な証拠はない.鉄欠乏が一般的でかつ貧血が重大な臨床問題であるという地域から引き出されたデータはほとんどない.鉄欠乏を防ぎ治療するための最も適した方法を確立するために,試験がこのような母集団に対して行われることが必要であり,そして,これらの研究は,母体と胎児の結果への重要な影響を検出するために,十分に大きくすべきだろう.


Citation: Mahomed K. Routine iron supplementation during pregnancy. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:大西優里/佐藤孝道)