多胎妊娠における入院ベット上安静

Hospitalisation for bed rest in multiple pregnancy

Crowther CA

最終更新日:14/05/1997


目的:早期産のリスク,胎児・新生児死亡率,新生児罹病率そして妊婦のケアの満足度に対する多胎妊婦の入院ベット上安静の効果を評価すること.

検索方法:このレビューは全体としてコクラン妊娠と出産グループの開発した検索方法によった.関連した試験は同グループの比較臨床試験特別レジスターで確認された.さらなる情報はレビューグループの詳細をみよ.

選択基準:多胎妊娠中の入院ベット上安静と,ルーチンの入院をせず合併症が起きたときに選択的に入院するのとを妊婦と児の予後に関して比較した報告されたデータをもつすべての出版,未出版または現在進行中のランダム化比較試験.一義的な結果は早産,周産期死亡率,胎児発育である.二義的な結果は他の新生児罹病率,長期の神経発達,母体罹病率,ケアに対する妊婦の評価である.

データ収集と解析:試験の組み込みや方法論的質の適合性は判定者によって評価された.データは判定者によって抽出され,二重に登録された.すべての候補となる試験は初期の分析を行って組み込まれた.試験の質の影響を評価するためや,合併症のない双胎妊婦,品胎妊婦,分娩前に頚管の展退や開大のある双胎妊婦における入院ベット上安静の効果を評価するために,あらかじめ決めて敏感度の分析を行った.

主な結果:1.全試験の分析.多胎妊娠におけるルーチンの入院ベット上安静の方針は早期産または周産期死亡率のリスクを減少させない.ルーチンに入院した群の女性からうまれた低出生体重児数は減少の傾向があり,ランダム割付についての評価がDであった試験を除くと,統計的に有意であった(OR 0.79; 95%CI 0.63-0.99).超低出生体重児数には差がなかった.その他の新生児の評価項目において入院安静の方針を支持するものはなかった.どの試験においても乳児の発達予後に有用であるという情報はなかった.妊婦がうけたケアについての妊婦自身の評価の報告はほとんどなかった.2.合併症のない双胎妊婦における入院ベット上安静の分析.早期産のリスクは減少しなかった.実際は有意に多くの妊婦が超早産(妊娠34週未満)であった(OR 1.84; 95%CI 1.01-3.34).周産期死亡率やその他の新生児の評価項目についても差はみられなかった.入院ベット上安静を行った妊婦は高血圧の発生のリスクが減少したが,ランダム割付についての評価がDであった試験を除くと,その効果はもはや明らかなものではなかった.この後半の意見は,観察者のバイアスがかかっているので,慎重に解釈する必要がある.3.品胎妊婦の入院ベット上安静の分析.入院群とコントロール群間で行われた比較のほとんどでルーチンの入院ベット上安静の有益な治療効果が示唆された.しかし研究群とコントロール群間のすべての差は有意なものではなかった.4.分娩前に頚管の展退や開大のある双胎妊婦における入院ベット上安静の分析.早期産,周産期死亡率,胎児発育やその他の新生児結果のリスクにおいて差が見られなかった.

結論:現在のところ多胎妊娠のルーチンの入院ベット上安静の方針を支持する明確な証拠はない.早期産や周産期死亡のリスクを減少しないのは明らかであるが,胎児発育が向上することについては示唆される.合併症のない双胎妊婦では超早産のリスクが増加するという点で有害かもしれないことが示唆された.それと反対に有用であるというさらなる証拠がでるまでは,臨床の場ではこの方針は勧められない.品胎妊婦ではこの方針に対して主には有用な影響が観察されるが,これらはすべてばらつきによるものかもしれないことを繰り返さなければならない.臨床の場でこの方針を広く採用するには根拠がない.分娩前に頚管の展退や開大の徴候があり,早期産のハイリスクである双胎妊婦において,この方針を臨床の場に採用する根拠はない.多胎妊娠での入院ベット上安静については,限定されたうまく対象化された評価のみうけるべきであり,さらに利点や欠点を明らかにすべきである.加えて特に品胎や高齢の多胎妊娠おける対照化した評価が必要である.胎児発育に対する好ましい効果についてのさらなる評価は行う理由がある.さらなる研究にて乳児の長期の神経的予後を決定したり,行われたケアに対する妊婦の見方を評価したり,入院ベット上安静の妊婦では高血圧への伸展のリスクが減少するという仮説を評価すべきである.


Citation: Crowther CA. Hospitalisation for bed rest in multiple pregnancy. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:久保理恵/佐藤孝道)