高齢の近位大腿骨骨折患者における入院時集学的リハビリテーションの有効性

Effectiveness of co-ordinated multidisciplinary inpatient rehabilitation for elderly patients with proxyimal femoral fracture

Cameron I, Finnegan T, Madhok R, Langhorne P, Handoll H

最終更新日:23/07/1998


目的:高齢の近位大腿骨骨折患者において,老年病科医師による助言による,集学的入院リハビリテーションの,従来の整形外科的ケアと比較した有効性の評価に関する我々のレビューを更新すること.

検索方法:コクラン筋骨格-外傷グループの一般的調査方法に添って関連したランダム化比較試験を検索した.また,すでに発行されている整形外科及び老人医学に関係する本や研究論文の引用文献リストや,同分野の研究者からも情報を得た.

選択基準:特殊リハビリテーションを用いた大腿骨近位骨折の術後管理に関する全てのランダム化比較試験と準ランダム化試験を対象とした.主として高齢者(65歳またはそれ以上)を対象としているものを選んだ.アウトカムとしては死亡率,身体機能,治療日数と入院期間などを含めた資源の使い方,退院後に必要とする介護レベル,生活の質(QOL)の感じ方,介護者の負担とストレス,そして費用を評価したものを選んだ.

データ収集と解析:データはすでに発表されている5つの研究から抜粋され,上述のような項目を解析した.今回の更新では,1つの発表された研究が,これは以前に含めたものであるが,引き続き比較データがないことから"評価を待っている研究"に割り当てられた.さらに,2つの新しい研究が選ばれた.1つは出版のために提出された報告,もう1つは結果がまだ途中のものである.これらは同時に"評価を待っている研究"にも割り当てられた.臨床的に関連のあるアウトカムを組み合わせ,原因となりうるほかの要素を調査するため補足解析を加えた.

主な結果:追跡期間終了までの死亡数や医療機関でのケアを要した期間については介入群とコントロール群との間に有意な差は認められなかった(オッズ比 0.92 95%信頼区間 0.71-1.18). 入院期間と費用にはかなりのバラツキがみられた.死亡数と機能低下を組みあわせたものをアウトカムとして求めると,オッズ比が0.83(95%信頼区間 0.64-1.07)となった.バラツキがあるのでこれは十分注意して解釈すべきであろう.生活の質については報告がなく,ケアする人の負担について調べている二つの研究は介入にって不利益はもたらされないこを示した.更新されたレビューでは,これらの結果から何ら新しいデータにはならなかった.

結論:レビューの対象とした研究は,異なった目的,介入そしてアウトカムを含んでいた.このため,結果はバラツキがあり,近位大腿部骨折後の入院患者にたいする異なったタイプの共同のリハビリテーションの有効性に関する問題は,結論的には答えられない.アウトカムをいろいろと組みあわせる(例えば,死亡数と医療機関でのケア,死亡数と機能の悪化など)と有効である傾向は見い出された.コストは入院期間が短ければ減る傾向にある.大腿骨頚部骨折の発症やこれに関連する社会の負担が増加すると,ケアの質を維持あるいは高めることと同時にコストを抑える方法を調査することが必要不可欠となる.あらに他に早期退院サポートや在宅医療のようなケアのモデルが現在進められている.そのような計画の研究や集学的入院リハビリテーションの研究は,このレビューに示された方法論的問題を考慮に入れるべきである.そして,個々の要素を評価するよりも,多分野にわたるリハビリテーション全体の有効性の確立を総体的に目指すべきである.


Citation: Cameron I, Finnegan T, Madhok R, Langhorne P, Handoll H. Effectiveness of co-ordinated multidisciplinary inpatient rehabilitation for elderly patients with proxyimal femoral fracture. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:古賀義規/岡山雅信)