急性肺機能障害を起こした早期産児における選択的高頻度振動換気法と従来の人工換気法の比較

Elective high frequency oscillatory ventilation vs conventional ventilation in preterm infants with acute pulmonary dysfunction

Henderson-Smart DJ, Bhuta T, Cools F, Offringa M

最終更新日:10/08/1998


目的:このレビューの目的は,呼吸窮迫症候群(RDS)による呼吸不全の早期産児において,従来の人工換気法(CV)に比較して,高頻度振動換気法(HFOV)の使用が悪影響なしに慢性肺疾患(CLD)の発生率を減少させるかを決定することである.

検索方法:検索はOxford Database of Perinatal Trials,MEDLINE,EMBASE,孫引きや抄録集や会議とシンポジウムの要約集を含む過去のレビュー,専門家からの情報提供,コクラン共同計画による主に英文雑誌のハンサーチから構成された.日本語の専門的情報提供者の検索はY.オガワ教授によりなされた.

選択基準:主にRDSによって肺機能障害を起こした間欠的陽圧人工呼吸が必要な早期産児あるいは低出生体重児に対する選択的高頻度振動換気法と従来の人工換気法を比較したランダム化比較試験.ランダム化と治療の開始は間欠的陽圧人工呼吸の開始後可及的にすみやかに行なわれ,通常出生後12時間以内であった.

データ収集と解析:それぞれの試験の方法論的な質は,試験の著者や施設の名称を伏せて別の著者によりレビューされた.それぞれの著者は別々にデータを抽出し,比較して差をなくした.コクラン新生児レビューグループの標準的方法が相対リスク(RR)と絶対リスク差(RD)を用いてデータの集計に用いられた.絶対リスク差の逆数(1/RD)から,利益のためのNNT(number needed to treat),有害事象のためのNNH(number needed to harm) が計算された.

主な結果:適切な6つの研究のメタ・アナリシスにでは,CVに比較し,HFOVの使用は死亡率については差が認められなかった.HFOVの群で生後28-30日時点での生存者におけるCLD,「28-30日における死亡あるいは慢性肺疾患の頻度」,妊娠週数36-37週あるいは退院時の生存者におけるCLDの頻度が減少する傾向が見られた.しかしながら,HFOVの使用により,重度(3度・4度)の脳室内出血(IVH),脳室周囲白質軟化症(PVL)は増加する傾向があった.HFOV群で全ての肺air leak症候群(ALS)をわずかに増加させることが判明した [集積相対リスク 1.19(1.02, 1.38)].わずか2つの試験が神経発達的評価をしており,HFOVにおける生存者の方が神経学的に異常にものが多かった [集積相対リスク 1.26(1.01, 1.58)].

4つの試験のサブグループ分析で高換気療法(HVS)が使われた.HFOVは呼吸機能の予後はより良好であった.28-30日齢の生存者におけるCLD [集積相対リスク 0.53(0.36, 0.76)],28-30日齢における死亡やCLD [集積相対リスク 0.56(0.40, 0.77)]が有意に減少した.妊娠週数36-37週あるいは退院時の酸素使用率は有意な差が認められなかった [集積相対リスク0.74(0.55, 1.01)].またIVHあるいはPVLの比率には差がなかった.4つの試験のサブグループではサーファクタントがルーチンで使用されていた.3つにおいては,HVSも使用されていた.サーファクタントの使用の結果はHVSの結果とほぼ同様であった.さらに1つの試験によりHFOVは入院費を減少させるかもしれないことが示唆されている.

2つの試験のサブグループでは(HIFI 1989とRettwitz-Volk 1998),HVSが使用されていなかった.CLDの発生頻度においてHFOVの効果は認められなかったが,PVLの発生率が増加していた[集積相対リスク 1.64 (1.02, 2.64)].

結論:メタ・アナリシスは,動物による基礎研究でその使用が勧められているHSVを使用していないとか,サーファクタントは利用できなかったという大規模なHIFI試験がその大部分を占めている.HVSを使った研究では,脳室内出血(IVH)や脳室周囲白質軟化症(PVL)の頻度は増加することなしに,短期の評価ではCLDに関して有益性を示した.

しかし,これらの結果を解釈するにあたり注意が必要である.なぜなら1)治療は盲検ではなく,これはいくつかの結果に影響を及ぼしうる.2)放射線学的及び超音波による一次的予後の評価が,治療医師団に対し常に盲検となっているわけではなかった.3)さまざまな出生週数あるいは出生体重の児に関して,有益性と有害性が報告されていない.4)一つの小規模な試験を除いて,新生児期以降の生存,肺機能,神経発達に関してHVSを使用した試験からは報告されていなかった.さらにHFOVを用いた群の結果は確実に一般化することができない.

これらの問題点が解決されるまで,RDSの早期産児に対する人工換気のルチーンの方法として,HFOVは勧められない.

今後の試験は,CLDの危険性が最も高い超早期産児に的をしぼり,児は出生週数で階層化してランダム化すべきである.重大な長期的な肺や神経発達に関する予後と同時に経済的意義も測定・報告されるべきである.


Citation: Henderson-Smart DJ, Bhuta T, Cools F, Offringa M. Elective high frequency oscillatory ventilation vs conventional ventilation in preterm infants with acute pulmonary dysfunction. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:佐藤孝道/今道英秋)