HIV母子感染のリスク減少を目的とした介入

Interventions aimed at decreasing the risk of mother-to-child transmission of HIV infection

Brocklehurst P

最終更新日:19/06/1998


目的:HIV母子感染のリスクを減らす目的で行われる介入が臨床的に有用なほど感染の危険や新生児死亡率・罹病率を減少させるか,またはどの程度減少させるか,さらに母体死亡率や罹病率に影響がでるかどうかについて判定すること.

検索方法:このレビューは全体としてコクラン妊娠と出産グループのために開発された検索方法を利用した.

選択基準:このレビューへの組み込み条件を満たす研究は,HIV母子感染のリスクの減少を目的とした何らかの介入がプラセボ群または非介入群とランダム化比較されたものか,

または母子感染のリスクの減少を目的として何らかの2種類あるいはそれより多数の介入の間でランダム化比較されたものでなけらばならない.  

データ収集と解析:データは出版された報告書から事前に決定したデータ集計様式に抽出される.追加情報が必要な場合には原著者に連絡される.

主な結果:ジドブジン二つの試験が適合基準を満たした.最初の試験は長期にわたるジドブジン投与をプラセボと比較したものである.生後6週までの新生児に対するジドブジン治療に加え妊娠中や分娩時におけるHIV感染婦人に対するジドブジンは母児感染のリスクを実質的に減少させているようである.しかしながら,この減少幅は不正確に評価されたものである.

二つ目の試験は短期のジドブジン投与(36週から出産まで)とプラセボを比較したタイでの試験である.予備調査の結果では長期投与の感染リスク減少効果と同様の効果が見込まれている.

結論:【診療への示唆】

ジドブジン使用の意義においてジドブジン療法はHIV母子感染の危険を減少させるために現在唯一有効であるとされる介入法であり,それはランダム化比較試験においてその臨床的有効性が示されたものである.そういうわけで全HIV感染妊婦はこの二つの試験の結果を知らされた上での意志決定ができるようにすべきである.

【研究への示唆】

ジドブジン研究の意義においてジドブジンの異なった用量処方(特に短期治療)が同様な有効性を示すかどうかをより厳密に判定するためにさらにランダム化試験が必要である.子宮内でジドブジンに暴露された子供の長い期間をおいて出てくる影響を評価するための長期の追跡調査が必要である.ジドブジン単独療法の行方を心待ちにしている母親にその効果が早く届けられる必要がある.


Citation: Brocklehurst P. Interventions aimed at decreasing the risk of mother-to-child transmission of HIV infection. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:佐藤孝道,糸矢宏志/鶴岡優子)