精神分裂病に対する電気けいれん療法

Electroconvulsive therapy for schizophrenia

Tharyan P

最終更新日:06/11/1996


目的:電気けいれん療法(ECT)が精神分裂病患者において全般的改善,入院期間,精神状態や行動・機能の変化について臨床上有意義な利益をもたらすかどうかを判定する.

検索方法:Biological Abstract,EMBASE,MEDLINE,PsycLIT,SCISEARCHの電子検索,同定したすべての研究の引用文献をハンドサーチした.

選択基準:精神分裂病,分裂感情障害または慢性の精神障害の患者を対象とし,ECTと,プラセボ,偽ECT,非薬理学的介入またはメジャートランキライザーとを比較したすべてのランダム化比較試験.

データ収集と解析:レビュアーはデータを独立して抽出し,intention-to-treat分析を行った.

主な結果:短期的にはプラセボを投与した患者群と比べてECTで治療した精神分裂病患者は,全般的機能に関しては改善が見られなかった症例は少なかった(OR 0.48 99%CI 0.26-0.90).しかしこの効果は長く続かない.しかし,精神分裂病の患者ではメジャートランキライザー治療に比べてECTは有効性が低い.メジャートランキライザーとECTを組み合わせると,短期的には5から6人に1人の割合で臨床的改善の速度や程度が増加すると示唆する限定的エビデンスが存在する.中期から長期間ではECTの有効性に関するエビデンスははっきりしない.ECTは今ではすたれたインスリン昏睡療法より有効である.

結論:短期的な症状軽減のために精神分裂病の患者にECTを使用することを支持するいくらかのエビデンスがある.薬物治療だけではかぎられた反応しか示さない精神分裂病の患者に対してメジャートランキライザーによる治療の補助としてECTを使用することを擁護されるかもしれないが,エビデンスは強くない.実際,50年以上にも及ぶ広汎な臨床使用にもかかわらず.精神分裂病に対するECTの施行には強い研究根拠が欠如している.


Citation: Tharyan P. Electroconvulsive therapy for schizophrenia. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:糸目千穂/竹内 浩,古川壽亮)