妊娠糖尿病に対する食事制限

Dietary regulation for 'gestational diabetes'

Walkinshaw SA

最終更新日:17/07/1996


目的:妊娠糖尿病あるいは耐糖能異常の認められる妊婦において,食事制限を第一選択とすることで胎児の大きさや合併症・胎児発育の異常に起因する新生児の代謝的障害が減少するか否かについて評価する.

検索方法:コクラン妊娠と出産グループによって維持・更新されている臨床試験のレジスター.将来的にはコクラン糖尿病グループの検索方法も用いられるであろう.

選択基準:経口耐糖能試験で異常が認められた妊婦に対して,一つの群には何も特定の治療をせず,もう一方の群には食事療法を第一選択として開始し比較した,すべての出版されたあるいはされていないランダム化試験である.

データ収集と解析:試験方法やその実施に関するデータはそれぞれの研究の特色をまとめたあらかじめ決められた表に抽出された.試験結果はあらかじめ決められた比較表にまとめられた.各試験は結果を検討する以前にその方法論的な質を評価された.

主な結果:治療された群の出生体重には軽度のしかし有意ではない減少を認めた.

結論:これらの試験から耐糖能異常を有する妊婦にまず食事療法を選択することの価値を支持する証拠は得られない.最近の未出版のOkumによる試験以外は,小規模であったり,質がばらばらであり,産科的・新生児的問題について明確に言及されていない.これらの試験における治療群にしめされるような積極的な管理は時間も労力もかかりそのような妊婦をハイリスク群として位置ずけることになる.その結果さまざまな産科的介入をまねくことになり得る.帝王切開率が治療により影響されるなどの重要な問題に関する確実な証拠がなくては,そのような''治療的''な手段は正当化されることは難しいと思われる.妊娠糖尿病と診断された母親と児の長期予後に関する問題はこのレビューの対象外であるが,現時点の証拠に基ずけば妊娠糖尿病を管理してゆく唯一の理由はそれら母児の長期予後である.''妊娠糖尿病''の発見や食事療法を含むすべての形での''治療''は妊娠に対する実際の予後不良を減少させるかどうかを評価するランダム化試験においてのみ強調されるべきである.


Citation: Walkinshaw SA. Dietary regulation for 'gestational diabetes'. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:水谷武夫/佐藤孝道)