急性小児喘息の初期管理における抗コリン薬とβ2刺激薬の吸入の併用による有効性と安全性

Efficacy and Safety of Combined Inhaled Anticholinergics and Beta-2-Agonists in the Initial Management of Acute Pediatric Asthma

Plotnick LH, Ducharme FM

最終更新日:28/02/1997


目的:この研究の目的は,急性小児喘息における抗コリン薬とβ2刺激薬の吸入の併用の治療効果の程度と副作用の概略を調査することである.

検索方法:(1) MEDLINE(1966から1996),EMBASE(1980-1995),CINAHL(1982-1995)の系統的文献検索 (2)抽出したRCTの関連リスト (3)臭化イプラトロピウムをつくっている製薬会社に連絡 (4)同僚や研究者に個人的に連絡,等を通じてランダム化比較試験を抽出する.

選択基準:18ヵ月から17歳までの急性小児喘息における抗コリン薬とβ2刺激薬の吸入の併用とβ2刺激薬単独の吸入とを比較したランダム化比較試験を内容に持つと考えられるもの.

データ収集と解析:関連した試験が,方法論的な質や,データの抽出について,それぞれの評価者によって独立に評価された.可能な場合は著者から方法やデータの確認をとりながら.プライマリ・エンドポイントは入院であった.それ以降のセカンダリーエンドポイントはまた次のように考えられた.肺機能検査(PFTS),臨床上のスコアー,酸素飽和度(O2Sat),副腎皮質ステロイドの必要性,プロトコール以降に必要であった治療の数と患者の素因,追加の治療を要する再発,副作用.

主な結果:37の抽出された研究のなかから,10のRCTsが関連があり,その多くが(N=8)高い質のものであった.研究はβ2刺激薬療法に加えられた抗コリン吸入薬の数によって分類された.1つの研究は2つのプロトコールによって行われた.単用量のプロトコールでは(N=5)併用療法による入院期間の減少効果はなかった(OR 0.8, 99%CI 0.3〜2.4),N=2).しかしながら,β2刺激薬と抗コリン薬併用においてFEV1の%変化のグループ間の違いが観察された.60分では(WMD 16(2〜30)%,N=2),120分では(WMD 17(4〜15)%,N=2)で,共に併用療法が良好であった.他のPFTSや他のアウトカムでは有意差がみられなかった.多用量のプロトコールでは(N=5),それは重症の病態の増悪に絞って行われたが,入院率の低下が併用療法で,良好なものとして観察された(OR 0.6, 99%CI 0.3〜1.1),N=5).11人の患者が1人の入院を避けるために治療される必要があった.最後の併用吸入後60分たって,予想されるFEV1の%変化において,10%の差が(4,15)併用療法で良好であった.他のアウトカムでは違いがみられなかった.抗コリン薬とβ2刺激薬の併用吸入の数を患者の反応を見ながら数えるプロトコールでは2,3のアウトカムにおいてグループ間の違いは認められなかった.

結論:β2刺激薬療法に抗コリン薬の吸入を1回加えると,入院率には大きな効果はないが,肺機能の改善は認められた.多回数のプロトコールでは肺機能は,改善し,この治療を受けた11人のうち1人は入院を避けることができた.これらの結果は中程度の又は重症の喘息増悪の子供に当てはまるようだ.臨床的反応を見ながら併用吸入の回数を調節するプロトコールでは患者に必要とされる治療回数を減らすことはできなかったようだ.我々はベースラインの重症度や,副腎皮質ステロイドの併用療法がどれくらいこの結論に影響を及ぼすかは十分に検討できなかった.抗コリン薬とβ2刺激薬の吸入の併用は上記の3つのプロトコールで治療された患者の悪心嘔吐の回数やふるえの経験を増やさなかった.


Citation: Plotnick LH, Ducharme FM. Efficacy and Safety of Combined Inhaled Anticholinergics and Beta-2-Agonists in the Initial Management of Acute Pediatric Asthma. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:福田泰代/和座一弘,吉村 学)