喘息発作に対するβ作動薬のホールディングチャンバー(スペーサー)とネブライザーでの比較

Comparison of holding chambers and nebulisers for beta-agonists in acute asthma

Cates C J

最終更新日:13/02/1998


目的:このレビューの目的は,喘息の急性増悪時の治療におけるβ作動薬の投与方法のホールディングチャンバー(スペーサー)とネブライザーの効果を比較をすることであった.

検索方法:コクラン気道レビューグループの比較臨床試験特別レジスタ及びコクラン比較臨床試験レジスタを用いて,その中からランダム化比較試験を選んだ.

選択基準:すべてのランダム化比較試験(RCTs)は大人から子供(2歳から)を含み,β2作動薬の投与方法をホールディングチャンバー(スペーサー)とネブライザーで比較した.アウトカムの評価は病院への入院,救命救急室(ED)にいた期間,呼吸数の変化,血液ガス,脈拍数,振戦,症状のスコアー,肺機能を含んでいた.1人のレビュアーが信頼性が高いと思われる論文を選んだ.二人目のレビュアーが研究方法の質的な評価を独立して行った.レビュアー間の一致を確認するためにカッパーテストがなされた.

データ収集と解析:データの抽出は単一のレビュアー(CJC)によってなされた.欠落しているデータは(例えば肺機能の変化についての標準偏差)著者から得るか,もしくは推定した.論文の他のデータから推定して得られた結果の影響を決めるため感度分析がなされた.データ分析はコクランReview Manager 3.0を使ってなされた.集積結果でのきわだった違いにより,大人と子供は別々に結果分析がなされた.単一治療の研究における気道への薬物到達の違いによる混乱を避けるため,多重治療の研究の結果のみが集積された.

主な結果:初めに112の要約がデータベースから選択された.そのうちから,タイトル,キーワード,MESH表題,要約から信頼性の高いものを選んだ結果,44の論文が詳細に吟味する論文に選ばれた.このレビューには判定基準に適した12の論文が限定された.このレビューの旧版以降,さらに1つの論文が発表されていた.この試験を含めてもこのレビューの結論は変わらなかった.2つの投与方法を比較したとき,大人と子供ともに入院率には際立った差はなかった[大人:オッズ比(OR) 1.12,95%信頼区間(CI) 0.45〜2.76,子供:OR 0.71,95%CI 0.23〜2.23].他のアウトカムにおいては有意な差が認められ,子供ではホールディングチャンバー(スペーサー)の方がより短い期間EDで過ごす結果となった[重量平均差(WMD) -0.62時間,95%CI -0.84時間〜-0.40時間].またホールディングチャンバー(スペーサー)は子供では脈拍数も低下させた[WMD -10.0%最低ライン,95%CI -14.13%〜-5.87%最低ライン].

結論:ホールディングチャンバー(スペーサー)を用いた喘息発作時のβ作動薬の定用量吸入は少なくともネブライザーと同程度のアウトカムを生むことがわかった.異なる機種で同等効力量の投与が不確実であることは,患者反応を見て治療数を決定し,短い間隔でのβ作動薬投与(例えばネブライザーによる1噴霧やホールディングチャンバー(スペーサー)による15〜20分毎の4吸入)することにより克服することができる.子どもにおける副作用はネブライザーの方がより多いことがはっきりされていると思われる.


Citation: Cates C J. Comparison of holding chambers and nebulisers for beta-agonists in acute asthma. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:久保理恵/寺倉精太郎)